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「ふぅ………」
屋上に設置されている大浴場を上がり、エントランスで飲み物を買ってベンチに腰掛けた。
いつもは部屋のお風呂で済ますが、こうしてたまに屋上の大浴場へ入るのだった。
(今日もまた言えなかった…………)
ペットボトルのキャップを閉め、ぼんやりと外を眺めながら今日のことを振り返る。
今日だけではない、歩いて帰る時はいつも か誰かに付きまとわれている気がした。
証拠はないが、帰りの同じ時間に同じタイミングで来る。
カルタや渡狸といるときでさえ、何かの気配がするのだ。
気配を辿ろうにもそれはこちらが気付くと巧妙に隠し、走ると同じ様に走ってついてくる。
さすがにここまで来ると何かに狙われているとしか考えられない。
「はぁ、」
無意識に溜め息をつく。
双熾に相談すれば話が早いが、こんなことで彼に迷惑を掛けたくない。
それに、彼に何かあったら。
それを考えるとこれを言い出すことは出来なかった。
「ふーん、それが最近元気がない原因?」
「えっ!?」
ふいに後ろから声を掛けられ、突然のことで身体がはねあがった。
後ろには、うさぎの耳を付けている夏目残夏がいて、彼はにっこり笑っていたのだ。
「悩める女の子の味方、残夏お兄さんだよー☆」
「っ、また人の心読んだんですね!」
彼の能力は少し厄介だ、
それを分かっているから双熾より余計に知られたくなかったのだ。
「前から分かっていたけど、そーたんが側にいたら言えないでしょ?」
「そう、ですけど………」
「安心して、君の身に余程の危険がない限りはそーたんには言わないよ?」
いつものように笑う夏目が少し信用出来なかったが、どうせなにをしたって彼には全て分かっていること。
なまえは盛大に溜め息をつくと、夏目が横に腰を下ろした。
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