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彼によると、高校に入ったら先祖返りが住まうマンションで暮らすというもの。
自分の主もそこに暮らすことを予定している。
恐らく、鬼との交流の為にそこに入れることが目的だろう。
やっと、やっと彼女が焦がれていた自由が手に入る。
僕は、まるで自分のことのように嬉しさが混み上がってきた。
「鬼との結婚を望むお二人になまえ様の、あなたへの想いを気付かれてはならない。それは分かって下さい」
彼女のことは特別に思っている、それは不思議とそう思う。
でも、これを愛と呼ぶのかは僕には分からない。
僕は彼女の自由と幸せを願っている。
彼女の純粋な気持ちはとても嬉しい、
「僕は、なまえさまが笑顔で幸せに暮らすことを望んでいます」
あの優しい心と、温かい笑顔をこの先守っていけることはなくても、
同じ空の下で生きている限り、それを願える。
彼女は、僕にたくさんのものをくれた。
僕はそれに応えたい。
「分かりました、最後に会わせて下さい。そして、彼女が高校に入るまでは決して会いません」
あのマンションに主が住むなら、いずれ僕もそこに行くだろう。
彼女といつしか同じ場所で暮らせる時がくる、
事が上手くいって、彼女が自由になったら。
僕は…………
「我々も、この話が進むようになんとかやっています。ですので、どうかよろしくお願いします」
彼女の両親に僕の想いも、彼女の気持ちも知られてはならない。
彼女は鬼と結婚するのだから。
「本当に、あなたで良かったですよ」
ふと、彼は微笑んだ。
今まで見たことない柔らかな表情、本当に彼女のことを愛しているのだと思った。
我が子のように、
「中はカメラに映るのでドアの外からお願いします」
「分かりました」
姿を見れなくてもい、ただ彼女の声を聞きたい。
その声で、今までみたいに名前を呼ばれて。
僕はそれだけで、彼女に会えない間、生きていける気がした。
待っててください、
僕は、必ずあなたをあの空の下へ連れて行きます。
続く
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