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「おーっす、おはよう。」

「おはよう、れんし……」

「きゃぁぁ!今日の私服も更にメニアック!!」


ラウンジに着いたなまえは幼なじみに声を掛けようとしたが、
それは意味不明な言葉によって遮られてしまった。


更に後ろから誰かに抱き着かれ、完全に身動きがとれない状態になっていた。


「あなたがなまえちゃんね、あたし雪小路野ばらって言うの、よろしくね!」

「あっ、よ、よろしくお願いします、野ばらさん。その…」

「野ばらさん、なまえさまがお困りなのでそろそろ離していただけませんか?」


困り気味のなまえにやんわりと双熾が間に入り、
なんとか野ばらから離れることが出来た。


「ごめんなさいね、あまりにもなまえちゃんが可愛すぎて…」

「い、いえ、急なことでびっくりして…
改めてよろしくお願いいたします。」


悪びれた様子の野ばらになまえは本当は良い人なんだと内心ほっとした。


「ねぇ、今度その絹のような肌、触っていい?本当に珍しいくらい綺麗な肌なんだよね。」


前言撤回。


彼女はなにかおかしかった。


「なまえ、ちゃん……」

「あ……」


野ばらに気を取られてしまい、彼女の近くに1人の少女がいたことに気付いた。


「彼女は2号室のSSの髏々宮カルタちゃんよ。」


飴を加えている彼女を野ばらが紹介し、なまえも名前を伝えて自己紹介をした。


するとカルタがじっとなまえを見つめ、真意が分からないなまえは若干戸惑いながらもカルタが口を開くのを待った。

「なまえちゃん、よろしくね?」

「あ、はい、よろしく……」


待った挙げ句にそれを言いたかっただけなのかと呆れたが、
カルタも悪い人ではないのだと判断した。


住人達が良い感じの人達で良かったと安心し、
早速朝ごはんを食べる為に席についた。


「本日はサンドイッチとヨーグルトになります、
飲み物は紅茶でよろしいですか?なまえさまがお好きな良い茶葉が入っているので。」

「私が紅茶好きって……」

「はい、なまえさまがお好きなものは事前にお調べしております。」

「……ありがとう、ございます…」


自分の為にこんなにしてくれるものなのか、
ふいに疑問を抱いたが彼がSSであるのだからこれから当たり前なのだろうとその時は思っていたのだ。


















マンションから少し離れた隣町まで車を走らせ、なまえと双熾は来ていた。

春休み最終日である今日は親子連れ等で沢山の人達がいる。


必要なものはとりあえずメモに認めていて、スムーズに買い物をすることが出来た。


「このティーカップ可愛い……」

「ガラスで出来たカップに桜の花びらが描かれて……本当に可愛らしいですね。」


ふと立ち止まった場所はカップやティーポットなどがたくさんあり、
思わず夢中になりながらお店の奥まで来てしまった。


夢中ななまえの横顔を見ていた双熾は小さく笑い、それに気付いたなまえは首を傾げた。


「なにか、面白かったですか?」

「いいえ、なまえさまは本当に紅茶がお好きなんだろうと思いまして。」

「自分で自分好みにいれて飲むのが好きなんです、
どんなお菓子に合うのかとか、考えただけで楽しくなります。」


なまえがそう言うと双熾は嬉しそうに笑い、逆に恥ずかしいことを言ったとなまえは顔を背けてしまった。


「1人で語っちゃってすいません……」

「謝らないでください、僕はなまえさまのお好きなものを更に知れて嬉しいんですよ?」

「御狐神さん、なんでも褒めすぎですよ…」

「そうですか?なまえさまが紅茶をご自分でいれる姿を想像したら可愛らしいと思ってます。」


なにを言っているのかとなまえは言いそうになったが、
恥ずかしさで逆にその言葉が出てこない。


ただ顔が赤くなり、それを隠す為にお店の外に逃げるように出てしまった。


「よろしいのですか?ティーカップは…」

「え、えっと、気に入ったのが無かったのでまた買います、」

「………そうですか、お次はどこか見ますか?」


何事も無かったかのように双熾は笑顔を見せ、
未だにそっぽを向くなまえに話題を変えながら接した。


彼女の横顔はまだほんのり赤く、それを隠す為だと分かっている双熾は余計に彼女を可愛いと思えた。


これ以上言ってしまえば困らせてしまう、
彼女を困らすことは避けたかった。


少しずつ話題を変えながら段々となまえの機嫌も直り、二人はデパートの中を歩いている。


隣にいることがこんなに幸せなのか、


小さなことだったが、今はそれが大きなものに感じていた。




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