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好きなものは買い与えられ、
側にいて会いたいと思えば直ぐに会える。
たくさん名前を呼ばれ、たくさん抱き締めてくれた。
でも、二人はいつだって彼女の話しかしない。
私といる間はしなくても、
ずっと彼女がいるから安泰だ、この家は彼女によって守られている。
だから、外へ放ってはいけない。
あの二人の中には彼女がいる。
私は、二番目。
私が先祖返りだったら?
二人の歪んだ愛情をも独占出来たの?
私は―――
「歪んでても、あなたは確かに愛されていたのよ」
「っ、」
双子の妹であるはずの唯。
彼女は何故こんなに冷たい目をしているのか、
突き刺さる視線に目が反らせなかった。
「あの人も、なまえちゃんしか見ていない。私はいつもあなたの妹でしかないの」
微かに震える声。
同じ双子なのに、先祖返りと人間と分かたれてしまった。
両方先祖返りで、両方人間だったらきっと違う運命だったのだろう。
それでも、先祖返りであることを、己の運命を受け入れてしまった。
「なんで、私は人間なの………私が先祖返りだったら、あの人は……」
「っ、唯!」
「私を、気安く呼ばないで!!」
唯はポケットからナイフを取り出し、突然なまえに向かって降り下ろしたが、ギリギリ顔を掠っただけだ。
怖い、
あの憎しみに満ちた瞳が、怖い。
唯は、妹は一体知らないところでどんな風に生きていたのだろうか。
もしかしたら………
「自分が愛されてないからあそこに閉じ込められたと思ってる?違うよ、なまえちゃんは愛されている、先祖返りってだけで」
あぁ……彼女は…
孤独だったのだろう。
周りは先祖返りであるなまえしか見ていない。
狗崎家の繁栄は全て先祖返りがいるから。
だから、逃げないように閉じ込める必要があった。
でも、それは愛情じゃない。
結局は自分本意にしか物を考えていないことになる。
あの人たちは、自分達さえ良ければ実の娘の気持ちなど考えない。
ただの道具と一緒だ。
「ねぇ、死んでよ………」
ぽつりと呟いた唯の声と共に、唯がなまえに向かって更にナイフを振りかざした。
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