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ドアに背を預け、お互いに腰を下ろした。


ドアは幸い木で出来ているので、少し大きめに話せば聞こえるくらいだ。


「以前、僕はあなたにこれまでの過去を少しだけお話しました」

「はい」

「初めてだったんです、自分のことを知ってもらいたいと思ったのは。あなたに、知って欲しかった」


自分の過去を話すのは別に悲しくとも苦しくともない、


大抵の人は同情してくれるから、自由を奪われて一族の為に軟禁される子供なんてそうそういないだろう。


でも、彼女には不思議と同情して欲しいとか思わない。


ただ知って欲しかった。


本当にただそれだけだ。


そして、彼女はその話に涙した。温かくて優しい涙を。
他人の為に心から涙を流すそんな彼女が輝いて見えた。


辛かったよね、苦しかったよねって………


そんな感情なんていらない。あったとしてもそれで僕は自由にはなれない。


自由になるにはたくさんの人を欺いて、底から這い上がるしかない。
そう思っていたから、辛いとか苦しいとかそんなことを思っていたら身が持たない。


その感情に蓋をするしかなかった。


「最初は、なんでここから出ることを願っているのに出ようとしないのか、本当に疑問に思いました」

「双熾さんは、自分の力でそこから出たんですよね?」

「ええ、でもその手段は本当に最低です。なまえさまには言えないくらいに………」

「でも、それでも双熾さんはそこから抜け出して環境を変えました。それはスゴいことだと思います」


双熾はその言葉に驚きを隠せない。
そんなことをまさか言われるとは思わなかったから。


「確かにここを出たいです、でも怖いです。本当にこの家がなくなったら私には帰る場所がない。だから全てを受け入れるしかなかった………」

「なまえさま、そんなことはないです。先祖返りがいなくなったからって……」

「迷信だって、分かってます。それでもやっぱり私はこの家を捨てられない。こんなこと凄く辛いのに、でも………」


あの空の下を自由に歩きたいのは本当。


この生活から解放されて、自由になりたいのも全部本当。


でも、怖い。


ここから出たら一体どうなるのか、この生まれ育った家を本当に置いて外で生きれるのか。


そう、本当は怖いというのが正しかった。








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