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彼女に、自らの過ちを打ち明けたら。


どんな顔をするだろう。


言えないのは、彼女に軽蔑されることを無意識に恐れていたからだ。


弱いのは、僕自身だった。



「双熾さん、話してくれてありがとうございます。少しだけ双熾さんを知れて嬉しかった」

「嬉しい、ですか?」

「双熾さんとどこか壁があったので、少しずつそれが無くなって嬉しかったんです。不謹慎でごめんなさい」


そう言ってなまえは小さく笑った。


胸の奥がまた痛む。


この笑顔を見る度に、苦しくて仕方がない。


「なまえ様は前に僕に出会えて幸せだと言いましたよね?」

「はい、言いました」

「僕も、なまえ様に出会えて幸せです。初めてです、こんなにも幸せな気持ちになるのは」


この気持ちに嘘はない。


今まで作ってきた偽物の気持ちはない。


女はそうやって言えば、簡単に本気にして嬉しそうに笑う。


それを分かっているから、何十、何百と騙しながら自身の自由の為に言ってきた。


でも、今は違う。


この気持ちを言葉にしてみたら、自然に言葉が溢れてきた。


これが、幸せなのか。


くすぐったいような、だけど温かい気持ちにさせてくれる。


初めて味わう感覚にどうしていいか分からない。


それでも、素直な気持ちを言葉にすることは全く悪いことではないと知った。


何故なら、彼女は恥ずかしそうに俯いた後、とびきりの笑顔を向けるのだから………


「私たちは、いつか先祖返りとか関係なく、幸せに生きていけるのでしょうか、私は自由に空の下を歩きたい…」


生まれてから一度も自由を手にしたことがない。


誰もが当たり前のように空の下を歩くことさえ出来ない。


叶うなら、いつか何にも縛られずに自由に歩きたい。それは周りから見ればとても小さな願いかもしれない。


それでも、自由になりたかった。


「僕が、いつかあなたを翔ばします。あの眩しい空の下を………一緒に歩きましょう」

「双熾さん……」


空の下を自由に歩きたいという願いは、この瞬間に一人ではなく二人のものになった。


こんな風に笑い合って夢を語る日々はもうじき終わりを告げる。


既に黒い陰が覆っていることに、まだ二人は気付いていなかった。








続く
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