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どうして、私は普通ではないのだろう。
どうして、皆と同じ人間ではないのだろう。
どうして、先祖は妖怪と交わったのだろう。
どうして、どうして…………
「双熾さんは、言いましたよね。私が強いって」
「…………」
今にも消えそうなか細い声。少しだけ震えているのが分かる。
泣いているかと思った。
彼女は下を俯いて、泣いているのだろうか………
「私は、強くないです。こんなにも弱い生き物なんです……」
顔を上げて自分を見据えた彼女は少しだけ笑って、困った存在ですよねとまた笑った。
その顔を見た時、どうしようもなく胸が傷んだ。
苦しくて、苦しくて。
その震える身体を、何故か手を伸ばして包み込んだ。
「っ、もう、いいです。無理に言わないでください!」
「双熾、さん?」
「無理に笑わないでください、僕はそうやって無理に笑うあなたを見るのが辛い………」
境遇が同じだった。
九尾の妖狐であるが故に、軟禁されて。自由を奪われた。
学校だけは行かせてもらえたが、あとはあの狭く感じる箱庭で過ごす。
僕は、自由が欲しかった。
あそこから抜ける為に、あの眩しい空の下を自由に歩く為に………
「そう、なんですか……」
二人は壁際に寄り掛かり、そっと手を繋いだまま座っている。
双熾はゆっくりと自分の生い立ちを語っていた。
他人にこんな話が出来るとは、自分でも不思議に思えた。
「どうして、なまえ様が泣くのですか?」
「苦しかったですよね?辛かったですよね、双熾さんはずっと、ずっと………」
自分が泣けない分、彼女が代わりに涙を流しているのか。
同じ境遇だから、余計にその痛みが分かる。
優しくて本当に純粋な彼女を、双熾は優しく見つめて親指でその涙を拭った。
「ありがとうございます、こんな僕の為に涙を流してくれて………本当に不思議な方ですね」
「双熾さん…………」
「僕は汚い生き物です、あなたのような綺麗な方の側にいる資格はないんです」
まだ、彼女には言えないことが山ほどある。
その裏側で、行った汚いコト。
ここに辿り着くまでに犯した過ちを、彼女に話すことは出来ない。
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