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夢を見た。
うろ覚えで不鮮明な部分が多かった。
だけど、夢の中の私は無表情。
笑顔も何もない、心さえも死んでしまった。
そんな私に小さな光が見える。
暖かくて、太陽の光のようにポカポカ包み込むような、
―――なまえ、さま……
この暖かさは、あの人と似ている気がした………
「ん………」
目が覚めると辺りは橙色の光が射し込まれ、優しい色が部屋を包む。
上半身を起こすと、朝より身体が軽い感触があった。
時計に目を向けると、既に夕方の時刻を指している。
「お腹、空いちゃった……下でなにかもらって薬飲まないと」
幸い、歩けるくらいまで回復していて、カーディガンを羽織って下に行く準備をした。
出る間際、部屋のチャイムが鳴り、双熾かと思いそのまま開けた。
「なまえちゃん、大丈夫?」
「唯………?」
「下でおかゆ貰ったの、食べれるかなって思って」
扉の向こうは双熾ではなく、妹の唯がいた。
唯の手にはお粥が入った土鍋や茶碗がトレーに乗せられ、ニコニコしながらいる。
部屋に入れるか迷ったが、唯は半ば強引に部屋に入っていった。
「ちゃんとキレイにしているんだね」
「う、うん。一応………」
「あ、ねぇ。あのお花可愛いね。なまえちゃんが作ったの?」
唯はテーブルの真ん中に飾ってある、プリザーブドフラワーに指を指した。
「あれは、御狐神さんが引っ越した日にたくさん持ってきてくれて……」
花が好きだと予め調べていたのだろうか、彼はテーブルいっぱい飾られたプリザーブドフラワー。
絶対に枯れない、花を。
「そう、」
唯は短く返事をし、なまえの側に近寄った。
あの笑顔を向けているのに、いつもと違った。
「ねぇ、なまえちゃん。私がなんでわざわざ日本に戻ってきたか、わかる?」
彼女にしてはやけに低い声でそう問われた。
引いたはずの頭の痛みが突如甦る。
そして、
――ねぇ、なまえちゃん。
「私ね、なまえちゃんを殺しに来たの」
――死んで、お願いだから…
重なる声が頭の中で響く。
私は、この声を知っている。
続く
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