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「39度、風邪ですね。大丈夫でしょうか?」

「はい…………っ、」

「起き上がらないでください、ただいま薬とお粥をお持ちします」


身体を起こそうとするなまえに双熾はそっと手で制した。


朝、目が覚めると身体が動かず、頭がやけに重く感じた。


時間になっても降りて来ないなまえを心配した双熾は部屋を訪たのだ。


「今日は一日静かにお休みください。僕がしっかり看病しますから」

「……………はい、」


本当は迷惑を掛けたくないので看病は断りたい、だがそれに反して熱のせいで思考が上手く回らず、ただ頷くことしか出来ない。


そんななまえに、双熾は小さく笑みを浮かべた。


「安心してください、薬を飲んだら少しお休みになって、またお元気ななまえさまにお会いしたいです」

「そう、ですね………」

「少し冷たいですが、失礼します」


前髪を掻き分け、額にひんやりとしたものが乗っけられた。


氷水に浸されたタオルは火照った部分をゆっくりと冷やしていく。


熱で意識が朦朧とするが、双熾に謝りたくて一生懸命目を開けた。


「ごめん、なさい………迷惑ばかり」

「なまえさま、そんなことをおっしゃらないで下さい。あなたの迷惑は、僕にとって嬉しいもの。だから、もっと甘えて下さい」


あぁ、どうしてあなたはそんなに優しいのだろうか、


甘えたくない、迷惑を掛けたくない。


あなたに出会ってずっとそう言い聞かせ続けたのに、


そんな壁を直ぐに壊してしまうほど優しい。



どうして――――――














「おやすみなさい、」


少しだけ苦しそうな表情に胸が苦しくなる。


ずっと笑って欲しい。


出来るならば、彼女の苦しみを取り除き、この身が果てるまで守り続けたい。


自分よがりのワガママだと分かっている、


それでも、彼女だから。


たった一人、狗崎なまえという大切な人だからそう願うのだ。






―――シャボン玉、お好きですか?




『わからない、だけどこれはわたしのキモチを飛ばしてくれるんでしょ?』



悲しいキモチ、
楽しいキモチ、
つらいキモチ、



ぜんぶ、ぜんぶ、


あの空の彼方に。





守れなかったその小さな羽根を、



今度こそ、守りたかった―――








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