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「男なんて暑苦しい生物はなまえちゃんから離れなさい!」
「野ばらさんの仰る意味が分かりません。なまえさまと離れている間、胸が苦しくて苦しくて。ようやくお会い出来た所を邪魔なさらないでください」
「なんですって?」
「ちょ、ちょっと、二人共………」
いい加減止めないと更に危険な雰囲気になると思い、なまえは止めようとした。
「あ、双熾さん!」
一際明るい声が聞こえ、二人の言い合いはピタリと止んだ。
「なまえちゃんが帰って来たからって置いて行かないで下さいよ!追い付けないじゃないですか」
「申し訳ありません、唯様」
双熾の腕を掴み、抗議したのは妹の唯だった。
昨日の今日でやけに距離が近く感じ、更に下の名前で呼んでいたことが気になった。
「おかえりなさい、なまえちゃん」
「た、ただ、いま……」
「カルタちゃんと渡狸くんは?」
「あれ、いない………」
「多分ラウンジじゃない?おやつ持っていそいそと行ったし」
野ばらがそう付け足すと、唯はそっかと言ってニッコリ笑った。
「みんなと仲良くなりたいから、お喋りしたかったんだ。後で行こうかな」
「それは良いアイディアですね」
「今日は双熾さんと夏目さんにマンションを案内してもらったの!」
「そう、なんだ、」
唯が言うには、1日じっとしていられず、最初は夏目にマンションを案内してもらっていた。
たまたま通り掛かった双熾を夏目が巻き込む形で、三人でマンションを回る形になったという。
だが、なまえの耳にはそういった詳しい話が頭に入らなかった。
頭の痛みが鈍く音を立てて襲ってきたのと、なんとなく胸がもやもやしていた。
「っ、」
「なまえさま?」
「えっと、宿題あるので、先に戻りますね!」
双熾に悟られたくない、
なんとなくそんな気持ちになり、この場から早く離れようとした。
胸の奥が正体不明の感情でいっぱいになり、どうしてもここから早く立ち去りたかったのだ。
「また、夕飯には来ますね!」
なんとか笑って誤魔化し、なまえは無理矢理その場から逃れた。
後ろから野ばらに呼ばれる声が聞こえたが、決して振り返らずエレベーターに乗り込んだ。
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