3
頭が痛い。
昨日から続く頭痛に顔を歪ませた。
最初は短くない感覚で訪れたが、今ではずっと鈍い痛みが頭を支配している。
なまえは溜め息をそっとつき、なんとか隣のカルタや渡狸に悟られないように努めた。
あっという間に学校での時間は過ぎ去り、カルタの提案で三人でマンションに帰ることになったのだ。
「明日は調理実習だって、良かったね。カルタちゃん」
「カップケーキ、なに入れようかな……」
他愛のない会話をしながら歩くと、不思議と早くマンションに着いてしまった。
今まで友人と学校に行って帰るなど経験がなく、この不思議な時間が好きになってしまう。
「おかえりー!制服メニアック!!」
「た、ただいま。野ばらさん」
中に入って早速野ばらに会い、彼女はいつもと違う服装になまえは首を傾げた。
「あー、仕事だったのよ。今回はちょっと厄介でね………」
「そうなんですか?野ばらさんのスーツ姿、ステキです。キャリアウーマンって感じが……」
「なまえちゃん、なんなら私の助手として働かない?今なら私がなまえちゃんに似合う制服を作って」
なまえの肩をがっちり掴んだ野ばらは若干息が荒かった。
「あ、あの、野ばらさん?」
「でも危険だわ、なまえちゃんが襲われて連れ去られて、あんなことされたら!」
話が全く別の方に行っている気がしたが、彼女を止めようにも止められない。
一体、野ばらはなんの仕事をしているのか。頭の中で色々と考えてしまった。
「野ばらさん、なまえさまに迫るのは控えてください」
「なによ、御狐神!また邪魔しに来たの?」
「とんでもないです、僕はなまえさまがお帰りになったので来ただけです」
野ばらの背後にいつの間にか立っていた双熾はやはり目が笑っていない。
対する野ばらは邪魔された為に苛立ちを双熾にぶつけていたが、双熾はいつもの爽やかな笑顔で交わしていた。
「なまえさま、おかえりなさいませ。ようやくお会い出来て僕は生きているのだと実感しました」
まだ言い募る野ばらを完全に無視し、双熾はなまえの前で膝を折り、そっと手を取った。
学校に行っている数時間でここまでとは、なまえはなんと返せば良いかわからなくなった。
.
[
back]