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「大丈夫?」
「え………」
ふいに我に返るとカルタが心配そうに顔を覗き込んでいた。
「お昼だよ、食べないの?」
「あ……ごめんね。早く食べなきゃだよね!」
「渡狸も一緒」
「バカ野郎!不良だから馴れ合いはごめんだ!」
「三人で食べよっか!美味しいお弁当作ってもらったから」
朝から上の空だったが、カルタや渡狸に迷惑を掛けないように無理矢理笑って誤魔化した。
不良だから一緒に食べないといいつつ、渡狸を交えて三人は屋上で食べることにしたのだ。
「外で食べると気持ち良いね」
「うん」
「仕方ないから食べてやるよ……き、今日だけだからな!」
三人は各々とお弁当を食べ始めた。
なまえはあまり箸は進まず、そんな様子を見ていたカルタは暫くすると口を開いた。
「妹、恐いの?」
「こわ、い?」
「難しいけど、なんとなくそういう風に見えた」
カルタの指摘が思いもよらない言葉で、それに対してどう答えて良いか分からなかった。
「唯って妹がいるのを知ったのは大きくなってからだし、話したことも、ほとんどなくて……」
「不安?」
「………わからない。どうして急に姿を現したのか、なんだか、胸騒ぎがするっていうか…」
「お前、苦労してるんだな…」
今まで黙っていた渡狸がぽつりと呟いた。
「少しだけ事情聞いたんだ、なんというか……」
「わ、渡狸くん!?」
目の前の渡狸は涙を一筋流していた。
突然の渡狸の涙になまえは目を見開き、咄嗟に言葉が出ない。
「言わなくていい!お前も辛かったよな、こういう話には弱いんだ……」
「あ、あはは……」
なまえが両親に軟禁されていたこと、妹と一度しか会ったことがないなど、昨夜少しだけ聞かされた。
同じ先祖返りの仲間がこんな目に合ったとは、渡狸は思い出すだけで胸から熱い想いがこみあがってくるのだ。
恐らく、この状況を見たら彼のSSの夏目が笑いながらからかうだろうと思った。
なんとなく、初めて会った時より近付きやすいのだと、距離が縮まったように思える。
同い年の友人が増え、なまえは心から嬉しくなった。
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