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――ねぇ、あそこにはなにがあるの?


小さい頃から決して入ってはいけないと言われた。


鳥籠の周りにはいつも厳重に結界が張られて、生まれてからその中に何があるのかを知らずに育ってきた。


ある時、両親は言う。


あそこには双子の姉がいる、だけどあれを外に出すことは出来ない。

外に出してしまえば鳥のように直ぐ羽ばたいてしまう。


そうなると、この一族は富も繁栄もなくなる。


だから、鳥籠にしまわないといけない………



結局、彼女はある意味一番に愛されていた。


哀れみの目を向けられることなく、ただ安全な鳥籠でぬくぬくと育って。


――可哀想に、あなたは本当に……



だから、欲しかった。


あの"温もり"だけは―――























「はぁ………」


何度ため息をついても結局、現実はなにも変わらないまま。


昨日は楽しかったはずだが、彼女のことがあってからは状況は一変した。


双子の妹、唯が妖館に来たことにより、昨晩はほとんど一睡も出来なかった。


あんなに妹を間近で見るのも、あんなに声を聞いたことは初めてだったから。


実家から何の連絡もないことが不思議だったが、ここに来てから一度も向こうから連絡がないので、連絡しなくても差し支えないのだと納得してしまった。


要するに本家の名を汚すことがない限り、彼らは眉ひとつ動かさないだろう。


それが当たり前の環境にいたはずだったが、ここに来てからすっかりそれを忘れていた。


(唯、か…………)


彼女の名前と存在を知ったのは大きくなった頃だと記憶している。


使用人たちが瓜二つで見分けがつかないだの、そんな会話を拾って繋ぎあわせた。


自分には双子の妹がいて、彼女は先祖返りではなく普通に暮らしている。


そう思うと、あの時の自分は酷く安心してしまった。


妹までこんな籠にいる必要はない、双子ならば尚更。彼女には自由にいて欲しいと願った。


「はぁ……」


なまえは窓から見える空を仰ぎ、再び溜め息をつく。


どうしても胸の奥の不安が拭えない、それでも妹の前ではなるべくそういう姿を見せないように気を付けようと考えた。





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