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目の前に倒れた女性は動く気配がなく、
なまえはどうして良いか分からず、隣の連勝の顔を見つめた。


隣にいるはずだった彼は既にいなくなっていて、
代わりに黒い紙のような物体が宙を浮いている。


それを見たなまえは小さく溜め息をついた。


「そいつはほっとけば大丈夫だから、そんな警戒するな」

「はぁ……」


本当に放っておいて良いのか悩んだが、
SSをよく知る彼が言うならそれが正しいのだろう。


そう判断したなまえは視線を反ノ塚に戻した。


「連勝はいつもその姿なの?」

「最近はこれが一番楽だからこの姿だ…」


そうかと短く返事をするとエレベーターが開き、
中から身なりをキチンと整った青年がいた。


ふいに彼と目が合うと、青年は真っ直ぐとこちらに向かって走ってきた。


「申し訳ありません、こんなにご到着が早いとは思わず、本来あなた様を迎えるのが私の役目なのに…」

「あ、あの……」


青年は来るなりなまえの手をそっと握り、片膝をついて目線を合わした。


あまりに近い距離に大分戸惑ったが、
非常に悲しそうな表情をしている青年を無下に扱えずそのまま黙り込む形になってしまう。


それに気付いた青年はなまえの手をゆっくり離し、
立ち上がってから彼女の目の前で慣れた手つきで綺麗に一礼をした。


「本日よりなまえさまのSSとなります御狐神双熾と申します。なまえさまにお会い出来る日を心待ちにしておりました」

「あなたが、私のSS……?」

「はい、あなたの楯となり刃となり、あなたの全てをお守り致します。僕はあなたの支えになれるよう人間として、いえ、犬としてあなた様に仕えて参ります」


「い、いぬ………」


はい、と満面な笑みで答える彼になまえはどうも対処出来ず、
別にそこまでやらなくて良いと思ったが口には出来ない。


小さな仔犬のような瞳でこちらを見つめる為、
なまえは双熾に文句の一つも言えない状況にいるのだ。


「それではお部屋までご案内致します」

「あ、はい……」


戸惑いながらもなまえは彼の後ろに着いていき、
連勝のSSは大丈夫なのかと不安を抱きつつ歩き出した。




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