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――ねぇ、雪。真っ白だよ、
最後に彼女を見たのは、あの雪が降りしきる冬の日。
でも、私はまどろむ景色の中でただただ自分を恨むことと、彼女に謝ることしか出来なかった。
――ごめんね、ごめんね。
あなたは、笑っていた。
許さない、そう言って全てを紅に染めた。
だけど、
私は、そんなことさえ今の今まで忘れていた――
歓迎会という名の小さな宴もそろそろ終わりを迎えていて、酒に酔う野ばらがなまえに手を伸ばした。
「んー!メニアぁぁぁぁック!!なまえちゃん、ホントに可愛いんだからー、ちゅーしたげる!!」
「え、あ、ちょっ……」
「野ばらさん、どうかお止めください」
野ばらの顔が眼前に迫ってくる瞬間、彼女の顔を寸前で双熾が手で押さえた。
彼はいつも通り、紳士的な笑みを浮かべるが明らかに目が笑っていない。
「なによ、邪魔よ御狐神!」
「とんでもないです、僕はなまえさまをお守りして…」
「男なんていらないわ!なまえちゃんを独り占めなんて許せない」
いつの間にか双熾と野ばらの言い合いになっていたが、涼しい顔で交わす双熾になまえは凄いななどと思っている。
白熱する二人を他所に、なまえはとりあえず散らかりっぱなしのテーブル周りを片付けることにした。
「俺も手伝うぜ」
「ありがとう、連勝」
袋を手にしたなまえの元に、人間の姿に戻った連勝がきて二人で片付けることにした。
ふと周りを見渡すと、ここの住人達はかなり個性的で自由だと改めて思う。
だが、ここが今まで生きていた中で一番心地よいと思う自分がいることも事実だった。
ゴミなどをひとつひとつ片付けていると、ラウンジの扉が開き、近くにいたなまえと連勝はそこに目を向けた。
「お姉ちゃん!」
一際明るい声が響き、全員がその声がする方へ目を向ける。
なまえは目を見開き、目の前の人物に一瞬頭がついていかなかった。
「………ゆ、唯…」
「お姉ちゃん、凄い久し振りだね!」
その場から動けないなまえとは反対に、唯と呼ばれた少女は無邪気になまえに抱きついた。
「なまえちゃんが、二人?」
カルタがぽつりと呟くと、唯は無邪気に笑っていた。
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