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「あ、あの、これは……」


野ばらとカルタに見せられたのは、テーブルの真ん中に苺がたくさん乗せられたケーキとチキンやら豪華な料理だった。


まるでパーティーのような状況で、事態を飲み込めないなまえに野ばらは小さく微笑んだ。


「なまえちゃんの歓迎パーティー。色々重なって遅くなっちゃったけど、改めてお祝いしようってなったのよ!」

「なんとかバレないように成功したな」

「なまえちゃん、このチキン美味しいよ?あ、ようこそ、妖館へ」

「みんな………」


どうしようもなく涙が溢れそうになる。
ぐっと堪えても止めどなく涙が流れた。


こんなにも温かくて優しい気持ちが嬉しくて、言葉でこの気持ちをどう表現して良いか分からなくなる。


そんななまえを見た野ばら達は心から嬉しそうに笑い、なまえの頭を優しく撫でた。


「喜んでくれて良かった!ほらほら泣かない、泣かない!」

「久々に帰ってきて良かった、渡狸、起きて」

「く、くそ……」

「渡狸?」


豆狸の姿だった少年はいつの間にか人間の姿になり、それを見たカルタがそっと名前を呼んだ。


「か、カルタ……」

「久し振り……?」

「お、おう…」

どうやら彼らは顔見知りのようだったが、なんとなく態度がぎこちない気がするとなまえは感じた。


「あの、こちらの方々はここの住人の方ですか?」

「あ、自己紹介がまだだったよね、僕は夏目残夏☆僕の出世とかはスリーサイズはひ・み・つだよ!」

「………名前だけで結構です…」

「んー!つれない所がそーたんみたい☆僕はこっちの1号室の渡狸卍里のSSをしてまーす!」

「俺は不良だ!あとそこの狐野郎に勝負を挑みにきたんだ!」


カルタと話をしていたはずの渡狸が双熾に向かって叫びだした。


当の双熾はにこにこといつもの笑みを浮かべるだけで、隣の残夏もにこにこと笑っている。


「長年の恨みをここで晴らしてやるぜ!」

「御狐神さん、なにか恨まれることやったんですか?」

「ないとは言わせない、この狐や…」

「はいはーい☆これから楽しいゲームをやりましょー!題して、豪華商品付☆宝探しゲーム!」


渡狸の言葉を完全に遮った残夏がどこからかマイクを取り出し、1人で盛り上がりを見せていた。


なぜこのような騒動になったのか、全く持って理解出来ずにいる。


なまえは料理を冷めない内に頂きたかったが、この状況でそれはまだまだ無理な話だとこの時脳裏に過ったのだった。




続く
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