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マンションに着くと、なまえは直ぐに荷物を部屋に置きに戻った。


双熾は何やらやることがあるらしく、準備が出来たら先にラウンジに行くように言われたのだ。


「仕事片付けてから来るのかな……」


エレベーターを待っている間、双熾が終わるまで待とうか考えたが、邪魔をしては悪いと思って言われた通りに先に行くことにした。


真新しい携帯電話をポケットに入れ、それを嬉しそうに見つめた。


狗崎家で用意された携帯電話を使うことはない、
一応未成年である為、契約関係の書類は実家に行くが恐らく両親は見ていないだろう。


使用人達が事務的に処理をして、契約が出来ることになったが特に誰にもなにも言われない。


ただ一言、連絡がつくようにということだけだった。


だがあの携帯電話より、双熾が選んでくれた携帯電話があるからそんなことは気にしていない。


思わず笑みが零れてしまう。


「……やっぱ病気かな…」


1階にエレベーターが停まると同時に呟き、頭を一つ振ってエレベーターを降りた。


「っと……」


降りたのと同時に目の前に人がぶつかる気配がし、なんとか避けきった。


相手側も避けたが、上手く避けきれずそのままよろけてしまう。


「すみません!大丈夫ですか?」

「ってぇな……どこに目ぇ付けてんだよ!」

「……はぁ?」


ぶつかりそうになった相手は自分と同じ位の年齢に見えたが、彼の頬には絆創膏が貼ってある。

よく見ると学ランらしきものを着ていて、今まで会ったことのない彼になんと声を掛ければ良いか迷った。


(どちら様ですかじゃ失礼だよね……もしかしたら住人かもしれないし。)

「おい、ガン付けてんじゃねぇぞ!俺は不良だ!」


少年はなまえに向かってハッキリとそう言い切り、仁王立ちしている。


一方のなまえはいよいよなんと声を掛ければ良いか分からなくなり、再び頭を悩ました。


「おい、シカトする…」

「はじめまして、不良さん。ジャンプしてもお金は出て来ませんので、よろしくお願いします」

「はぁ!?」


すっとんきょうな声を出した少年はわなわなと肩を震わせ、下を俯いた。


驚いたなまえは大丈夫か声を掛けようとするも、それは少年によって遮られる。


「俺を……豆狸だと思ってバカにしてるんだろ!!」


少年が叫んだ瞬間、彼の姿が一瞬にして見えなくなってしまったのだ。




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