3



どんなに悲しくても、


どんなに怖い夜がきても、


あの白い鳥籠の中に入る者はいない。


ただそこでじっと踞り、一人で孤独に耐えるしかなかった。


夜の孤独が、怖かった。



















「はぁ……」


部屋に着いたなまえはケーキと紅茶をリビングのテーブルに置き、ひとまず着替えることにした。


寝室に入ると雨音が聞こえ、夜中に降るはずなのに予報は外れた等と考えながら着替える支度をした。


「早く着替えて、それで……」


――誰か、誰か……


「っ、」


着替えていた手をピタリと止めた。


脳裏を過る声に思わず体を硬直させ、下唇をぎゅっと噛み締めて何かに耐える風だ。


「だから、嫌なのよ……」


外は更に雨が強まり、雷の独特の大きな音が鳴り響く。


思い出すのは白い鳥籠、


あの時、私は……


「なっ、」


一際大きな雷鳴が耳に届いた瞬間、辺りは一瞬にして闇になった。


――誰か、誰か……




























「皆さんはここにいてください、僕はなまえさまを見てまいります」

「まぁ俺たちは気にすんな、暗闇は慣れてるし」

「それより早くなまえちゃんのとこに行かないと!」


野ばらや連勝に言われ、双熾は彼らを残してラウンジを後にした。


大きな雷が辺りに響いた瞬間、ラウンジの照明が全て落ちたのだ。


確認すると雷で停電が辺りで起きたらしく、マンションの全ての照明やらなにやらがダメになったそうだと連絡が入った。


だが先祖返りである自分たちに照明がないから、普通の人間のように影響があるわけではない。


「なまえさま……」


一応懐中電灯を手にした双熾は階段からなまえの部屋まで走り、一秒でも速く彼女の側まで行かないといけないと焦っていた。


先ほどの連勝の言葉が頭からどうしても離れない。


『いや、あいつは……』


そうだ、


サインは何回も出ていたはずなのに、どうして自分は見落としていたのか。


何の為に彼女の側で仕えると決めたのか、


「っ、」


歯痒い、自分のまだまだ未熟な部分が歯痒くて仕方がない。


彼女は一生懸命自分を見ようとしていたのに、自分は結局なにも分かっていなかった。


あの笑顔を守りたいのに……




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