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ふわふわと宙を舞うそれをとても綺麗だと思うのと同時に切なさを覚える。


この気持ちも一緒に連れていってと何度も願いを込めて今日も見送った。


私と、あなたへの想いも。


『シャボン玉、お好きですか?』


嫌いじゃない、だけど好きでもない。


そう伝えると見ず知らずのあなたは笑った。


最初に見た作り物の笑顔じゃない、本当のあなたの心からの笑顔。


『また、会えますから。どうか忘れないでください』


――忘れないで、どうかどうか……



重なる声は同じだった。




――あなたは、だれ?


そう問い掛けるとあなたは目を丸くし、
自己紹介が遅れたことを謝罪し、一礼した。


『私はあなたと同じ………』


あなたと同じ、ですよ。


だからあなたは何も悪くない、


このシャボン玉に願いを込めて、
あなたの為に僕はこれを飛ばす……


あなたの笑顔の為に………























「お着きになりましたよ、なまえ様」

「ん……」


うっすら瞼を開けると眩しい光が射し込み、
いつの間にか寝ていたことに今さら気付く。


乗って来た車の窓から目の前の建物を見上げ、
今日からここで生活をするかと思うと何とも言えない気持ちになる。


(ここが、私の新しい……)


セキュリティ万全、高級マンション「メゾン・ド・章樫」


そして各部屋にはSSが付くというセレブの為のマンション。


そんな生活が今日から私を待ち受けており、
昨日と全く違う環境に慣れるか少しだけ不安だった。


「ではなまえ様、月に一度はご実家にご連絡をお忘れなく、それとくれぐれも我が狗崎家の名に恥じぬようにお気を付けくださいませ」

「分かってる、だからもう下がって良いよ」

「では、私はこれで失礼します」


淡々とする執事との会話は何時ものこと、
彼らは仕事の対象だからこんな会話で、小さい頃からそれに慣れている。


黒塗りの車が見えなくなった所で最小限の荷物が入ったカバンを抱え、
最高と謳われる目の前のマンションに足を向けた。




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