2




帰宅する頃にはまだ降っておらず、なんとか安心してラウンジにカルタと共に行くことにした。


特にラウンジに用事があるわけではないが、なんとなく皆がそこにいる気がして足が向いてしまうのだ。


「あ、なまえちゃん、カルタちゃん、おかえりー!」

「お帰りなさいませ」

「おー、おかえりー」


ラウンジにいた野ばらと双熾と連勝が口々に言い、なまえは一瞬だけ黙り込んでしまう。


そんな彼女を心配し、双熾は側まで近付いて顔を覗き込んだ。


「どこか具合が悪いですか?」

「い、いえ……そういう訳じゃなくて、その……た、ただ、いま」


ぎこちなく彼らにそう言うと部屋の空気が更に穏やかになり、
恐る恐る彼らの表情を見ると小さく笑っていた。


「はい、お帰りなさい。なまえさま」

「んー!可愛い、その表情!まさにメニアックよ!!」

「立ち話もなんだから座れよ、いまお茶持ってくるからよ」

「ケーキも……」


はいはいと言いながら連勝は立ち上がって奥に行き、野ばらはニコニコしながらなまえを見ていた。


双熾も心なしか嬉しそうに目を細め、なんだかくすぐったいような気持ちになる。


"ただいま"といえば"おかえり"と返ってくる。


ただそれだけなのに、それが今はとても幸せに感じられた。


「そういえば今日は雷を伴う雨みたいよ、嫌よねー、雨とか」

「そうですね、停電に備えた方がいいですね」

「ほら、温かいお茶とケーキ貰ってきたぞ」


連勝はなまえとカルタに紅茶とケーキを差し出し、二人はそれを受け取りテーブルに置いた。


美味しそうなショートケーキに香りが素晴らしい紅茶だったが、なんとなく今は食べる気持ちになれない。


「しゅ、宿題やるから、これ部屋で食べるね。ありがとう、連勝」

「あ、おう……」

「じゃあ、失礼します」


ケーキと紅茶を持ったなまえは連勝の横を通りすぎ、
すれ違い様になまえは連勝に何かを一言だけ告げ、そのままラウンジを後にした。


一方の連勝は一瞬困惑した顔になったが、小さく溜め息をついて再び椅子に座ることにした。


「そろそろ、降るかな……」


ぽつりと連勝は呟いて窓を見ると、窓ガラスにいくつか水滴が当たっていた。


そして次第にその間隔が短くなり、やがて部屋の中にいても聞こえるくらいの雨音が耳朶に届く。




.

prev next

[back]


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -