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ふわり

ふわり


遠くに駆け抜ける、


あの蒼い海も、深紅のキャンバスも悠々と駆け抜ける。


無限に広がる世界は幼い瞳にきらきらと輝きを映す。


私もあの彼方まで翔べるなら、


この鳥籠から羽ばたいてみせるから……








「今日、雨だって……」

「雨?そういえば予報で言ってたような」

「雷を伴う大雨が夜中から明日の朝までくるみたいだよ?」

「そう、なんだ。じゃあ早めに帰ろう!」


外は分厚い雲に空一面覆われて、今にも降りだしそうなほどだ。


オリエンテーションがあった為、この日は早く帰宅することが出来た。


なまえとカルタは早々と帰宅しようとし、雨が降りだす前にはマンションに帰りたいと思う。


そんななまえの表情を隣を歩いていたカルタが不思議そうに覗き込んできた。


「大丈夫?」

「え、いきなりどうしたの?」

「なんとなく、焦ってる」

「雨が降る前に帰りたいなって!ほら、濡れるのとか嫌だしね」


空を仰いで雨がまだ降らないことを確かめ、再び二人は歩き出す。


そしてカルタはじっとなまえの表情を見つめ、そっと口を開いた。


「仲直り、したんだね」

「あ、うん、心配掛けちゃってごめんね、後で野ばらさんにも謝らな……」

「謝る必要はないよ、仲直りしたなら皆それで安心だから」


小さく微笑むカルタに思わず顔が熱くなるのを感じた。
絶対にいま顔が赤いだろうと自分でも分かる。


そんな風に言われることにまだ慣れない、
困らせたと思ったら直ぐに謝る癖はやはりまだ治らない。


そしてなまえはふと昨日、帰りに双熾に言われた言葉を思い出した。


「あの、カルタちゃん……」

「どうしたの?」

「あ、えっと……ありがとう…?」


ぎこちない物言いに自分でもまずいと思い、カルタの表情を見ると彼女は小さく笑った。


「うん、それでよし」

「う、うん………?」


果たしてこれで良かったのか、疑問に感じたが昨日それを双熾に聞くとそれで良いのだと言われた。


心配を掛させたらもちろん謝ることも大事だが、
相手を想って心配する場合もある、


だからそういう時は『ありがとう』


「なまえちゃん?」

「なんでもない!早く帰ろう!」


そうすれば相手は安心するから、


大丈夫だと、




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