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「ホットになります、お熱いのでお気を付けてください」


ソファーに座らされたなまえは真っ先に毛布を被せられ、双熾は膝まずいて目線を合わせ、目の前に淹れたての紅茶を差し出した。


「ありがとうございます、あと、毛布もありが……えっ、」


お礼を告げようとしたなまえは思わず声を上げてしまった、


目の前の青年が淹れたばかりの熱々の紅茶を頭から被ったからだ。


かなり熱いだろうと思ったが、あまりの衝撃に言葉が出ない。


「僕は本当に愚かです、なまえさまがあのようなことをさせるなんて……」

「私、御狐神さんに謝らないといけないんです」

「僕なんかに勿体ない……」


双熾がそう呟くとなまえは小さく首を振った。


悪いのは自分だった、モヤモヤした気持ちを彼にぶつけてしまったから。


やっと言いたかったことが出てきた。


胸の奥のつっかえたものがすってと消えて、全身から力が抜けていくような安心感に包まれた。


「では、僕からも……約束してください」

「約束?」

「辛い時に、笑わないでください」






――辛いのに、あなたはどうして笑っているのですか?





重なる、胸の深い場所に閉まった記憶と今が。


誰かにも同じようなことを言われた気がした……


「僕の前では、有りのままでいてください。
あなたが泣きたい時は受け止めます、心から笑いたい時は、僕も一緒に笑いますから……」

「っ、」


笑えば周りが困らない、あの人達が嫌がるから泣かないと、どんなことがあっても笑うと決めた。


それなのに、彼はそんな心の奥に閉まった気持ちを包み込むような温かさで言ってくれる。


どうしてこんなにも彼の言葉が嬉しいのか……


「わ、私が、素直に気持ちを出したら、受け止めてくれるんですか?」

「はい、僕はどんななまえさまでも愛し抜く自信がありますから」

「困らない、ですか?」

「困りません、むしろあなたが無理して笑うのが僕にとって心が痛いです」


真っ直ぐに真っ直ぐに、


希望のような光が胸に突き刺さる。


似たようなことはたくさん言われて、あなたの為にとかも嫌という程言われたのに。


目の前の青年が嘘偽りなく紡ぐ言葉が嬉しく、涙が溢れそうになる。




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