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真っ白なドレスにレースがあしらわれていて、胸には真っ赤な薔薇が一輪刺さっている。


ドレスといっても動きやすいように、丈は膝下になっているやつを実家から持って来た。


直接実家に行った訳ではなく、最初から何着が準備をしていたのだ。


なるべくあの家に戻らないように。


「ふぁ……」


思わず欠伸が出てしまったが、周りにバレないように小さく欠伸をした。


立食形式の為、カルタは目を輝かせながらお皿を持ってどこかへ行ってしまった。


特にお腹が空いている訳ではない、それよりも眠気が今さら襲ってくる。
なんとか代表挨拶までは持たして、あとはサッさと帰ってしまおうと考えた。


(御狐神さん、いないよね……)


昨日のあれから彼の姿は見ていない、
やはり契約破棄になったのだろうか。


元々SSに頼るつもりはなかったが、何故か彼がいないのが落ち着かなくなってしまった。


自分から八つ当たりしてあのような形になったのに、そう思うと馬鹿馬鹿しくなって自嘲気味に笑った。


(私が悪いのに、御狐神さんに嫌な思いをさせちゃった……)


謝りたい気持ちも当然ある、だがそれ以前に彼と顔を合わせたいようなそうでないような。


曖昧な気持ちが心の中で交差する、一体なにがしたいのか……


「はぁ……」

「おっと、」


誰かとぶつかったと思った瞬間になにか冷たいものがドレスにかかった。


「あー、かかてしまったな。ボーッとしてるから悪いんだぜ?」


くすくすと笑いながら言った人物を見上げると、昨日絡んできた男子生徒と取り巻きだった。


なんと低レベルなやり方だと思ったが、真っ先に気にしたのはドレスの方だ。


かけられたのは水だった為、白のドレスにそう影響はないと分かりひと安心した。


「折角のドレスが台無しだな、クリーニング代くらいは出すけど?」

「結構ですよ、あなたのような方から受け取る訳にはいきませんし」

「はっ、そういう余裕そうな表情がムカつくんだよ。何でもヘラヘラ笑っていればいいと思う……」


男子生徒の声が会場に響き、周りも気になり出した時、彼の言葉が止まった。


そして彼の頭からポタポタと雫が零れたのだ。


「なまえさまに謝罪してください」


今まで聞いたことのない低い声と共に。




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