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双熾となまえは思紋の前に横並びに座り、
居住まいを正し、彼女の言葉を待った。


「なまえ、双熾。其方らは儂のことを知らないのも無理はない。似たような境遇で外の世界を知らずに今まで来たからな……」

「どうして、それを?」

「思紋様は妖怪サトリの先祖返り。その能力故に多くの情報を得てパンクしないよう、この部屋にずっといらっしゃいます。」


なまえの質問に代わりに答えたのは思紋の隣に立っていた少女だった。


聞けば彼女もまた先祖返りで、普段は思紋の側に仕えているということだ。


(知らなかった……本当に、色んな先祖返りがいるって。)

「大丈夫じゃ、其方はたくさんの世界を見てきたのだろう?これからもっともっとたくさんのものを見て、感じて学んでいける。焦らなくても今は確実に良い方向へ進んでるであろう?」

「本当に、なんでもお見通しなんですね……」


考えていることが全て筒抜けのようで、
それでいてその言葉には温かい。


その言葉だけで前向きなものへと考えられた。


「菖蒲から全て聞いていた、まだ世の中に其方らのように一族で先祖返りを軟禁する者がいる。
菖蒲はそういった者達を許せない、儂にそう言ったんじゃ……」


そういえば、となまえは思い出した。
以前、菖蒲から先祖返りを一族で軟禁している者が許せないと語っていた。


「彼女は狗崎の家に先祖返りがいることを知り相談をしてきた、その時に御狐神家にも同じく軟禁されている子供がいることも知った。儂と菖蒲はどうにかしないとと思っていた……」


思紋から語られたこと、それは二人をどうしたら一族の軟禁から救えるか、
なまえも双熾も知らなかった事実がそこにはあつた。


そして菖蒲は双熾を御狐神一族から解き放ち、蜻蛉の世話役として青鬼院家に置いた。


一番難しかった狗崎家となんとか近付き……
それからはこれまで辿ってきたことと同じことか語られたのだった。









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