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「早く着いたから部屋にいたんだけど、田所が二人が来たって言うから一応挨拶しようとしたら………お邪魔だった?」
「そ、そんなことないよ!会えて……嬉しい、」
「本当にそういう恥ずかしいこと平気で言えるところ、変わってないのね。」
「え、え?」
怒られているのか呆れられているのか、どちらなのか分からないが唯の表情は最後に会った時と同じ穏やかなものだった。
その変化がただ嬉しかったのだ。
「二人が付き合ってるって本当なのね。」
「ど、どこでそれを……」
「野ばらさんがそう言ってたの。」
「野ばらさん?」
唯の口から出てきた意外な人物の名前に思わず聞き返してしまった。
彼女の説明によると、野ばらとはメールのやり取りをしているとのこと。
そんな話はもちろん初めて聞くことで、野ばらからも一言もそういう話を聞いたことがなかった。
「定期的に向こうにいる時にメールのやり取りやっていて、なまえちゃんの様子とか色々と知らせてくるのよ。本当に変な人たちよね、妖館は。」
そう言っている唯の表情はどこか嬉しそうで、なまえと双熾は互いに顔を見合わせて笑った。
あの時言っていたように、本当に野ばらと唯は友達になった。
そして定期的にメールで様子を教えてあげたり、彼女がきっと気に掛けていたことを野ばらは知っていたからこその行動。
帰ったらちゃんとお礼を言いたい、そう心の中で決めたのだ。
「そうだ、こんな雑談しに来た訳じゃないの。」
何かを思い出したように唯は指をパチンと鳴らし、なまえの方に視線を向けた。
「ねぇ、悟ヶ原さんって知ってる?」
「悟ヶ原さん?」
「そう、その悟ヶ原さんのお使いの人がさっき来てなまえちゃんに会いたいとか言ってたよ。」
それを伝えに来ただけだから、と唯はそう言った。
ただ、この先に起こることに対して変な胸騒ぎがしたが、それはただの気のせいだろうとその時は思っていたのだった。
続く
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