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双熾はそっとなまえの手の上に自分の手を添えた。


「僕は………あなたがこれ以上傷付く姿を見たくありません。」

「双熾さん……」


本当は行きたくないというのなら、どんなことをしてでも止めたい。


でも、それは彼女の望んでいることではない。
本気で嫌ったのであればそれはこちらも本気でそれを止める。


今回は違う、少なくとも彼女は両親と少しでも寄り添っていきたいと願っている。


憧れても手に入ることのない、そんなものを欲していた。


「私は、家族とかそういうことは今でもよく分かりません。」


双熾の手をの上にもう片方の手を乗せ、なまえはゆっくりと口を開いた。


「でも、ここに来てから………皆と関わるようになってから少しずつ変わっていきました。」


目を閉じれば、まだまだ短いけどここで過ごした日々が浮かぶ。


双熾に出会い、そして別れて。


再び出会った春、カルタや野ばらに幼馴染みの連勝。


そして渡狸に夏目、蜻蛉。


ここで沢山の人に出会って、沢山の思い出が溢れている。
それは狗崎なまえという存在がこの世に生まれていなければ出会わなかったこと。


「例え先祖返りでも、生まれてきたことに感謝してます。生まれていなければ皆に、双熾さんに出会うことはなかったです。」

「なまえさま………」

「両親に皆のことを話したいです、私が見ている世界を。」


運命を嘆くことも、諦めることもたくさんした。


それでも生きている、


今こうしてこの場所で、彼の隣で確かに自分流というただ一つの存在がそこにはある。


それが幸せなことだと気付いたから。


だから、彼らにも伝えたかった。








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