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「単刀直入に申し上げます、大晦日と元旦はご実家で過ごしていただいと思いました。」

「え?」


危うく手に持っていたカップを落としそうになった。


寸前の所で持ちこたえ、そのままカップを置いた。
それほど田所の言葉に動揺してしまったのだ。


「唯様も一度ご実家に戻られるとのことで、その日がちょうど大晦日と元旦です。なまえ様にもぜひお戻りいただきたいと思います。」

「え………それは……」

「ご両親はなまえちゃんのことをどう思っているのよ。ずっと軟禁してて全然接して来ないし、政略結婚させようとするし、それなのにいきなり実家に来いとかおかしいわ。」


なまえより先に声をあげたのは野ばらだ。
なるべく話に干渉しないようにしたが、彼の突然の話に思う節がいくつもあった。


野ばらの言葉を聞いた田所は小さく溜め息をつき、やがて重い口を開いた。


「旦那様や奥様も、なまえ様がお出になってから少しずつお考えが変わりました。」


田所から出た言葉は予想外のことで。
その場にいた三人は黙ったまま彼の言葉を聞いた。


「青鬼院家と事業で関わりを持つようになって、菖蒲様や蜻蛉様からここでの生活、どんな風に笑って、どんな風に周りと接しているのかをたくさんお聞きになりました。」


菖蒲や蜻蛉と接する機会が増えた両親は、主に蜻蛉からここでの生活の様子をたくさん聞かされたそうだ。


そこには今まで知らなかったことだらけで、
最初はあまり興味を示さなかったが、最近ではちゃんとその話に耳を傾けてるとのこと。


「少しずつではありますが、なまえ様を一人の娘として見ているのです。」


信じられない話だった。
今まで先祖返りとしか見られていなかった。


だが、田所の話を聞く限り先祖返りではなくただ一人の娘として見てくれているようだ。


それに、蜻蛉がそんな風に両親に話をしていたことが失礼だが一番信じられなかったのだ。










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