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「はぁ……」
「どうしたの、なまえちゃん?」
隣を歩いていたカルタに心配そうに顔を覗かれ、なまえは深く溜め息をつきながら先ほどのことを思い出した。
それは学校の前まで双熾に送られた時のこと、
カルタと共に車を降りたなまえの前に双熾は悲しそうな表情で見つめていた。
『あぁ、なまえさまと離ればなれになるなんて……
この身を焼かれることよりも痛く、悲しく……』
『あの、学校ですよ?カルタちゃんも一緒ですし…』
学校に行かなきゃ自分はなにをするのか、
彼の発言に最早突っ込む気力にもなれない。
膝まずいてなまえの手を取り、双熾はその手のひらにそっと唇を押し当てた。
『み、御狐神さん!?』
『おまじないです、悪い虫が寄ってこないようにと』
『っ、い、行こう、カルタちゃん!!』
双熾の手を振り払い、カルタの手を掴んでなまえは歩き出した。
後ろをこっそり見ると双熾がいつまでも見送っているのが見えた。
毎日こんな調子だと身が持たない、現に朝のあれでかなり疲れてしまった。
「なまえちゃん、教室ここだよ」
「あ、ごめんね、通りすぎた……」
カルタにより思考の淵から戻り、自分のクラスを通りすぎてしまったことに気付く。
カルタと同じクラスになった為、少しだけ不安だった学校生活もなんとかやっていけそうな気がした。
双熾のあれさえなければ。
「お前が狗崎か?」
「………そうですけど、いきなりなんですか?」
教室に入る直前、男子生徒数人に声を掛けられた。
表情を見る限り、彼らは何か好意的な眼差しではなかった。
「女が学年首位なんて、家の力使って入学したんじゃないか?」
「大体、先生達も狗崎の令嬢が入学したって騒ぎすぎなんだよ」
ああ、またかとなまえは溜め息をこっそりついた。
こういう嫌味はどこへ行っても付きまとう、慣れてしまったと言えばそうだ。
「女が、とか古くないですか?今のご時世、性別関係ないですし、それを気にするならもっと勉強した方が賢明ですよ」
「な、なんだと、おい!」
「行こう、カルタちゃん」
男子生徒を通り過ぎて教室に入り、なんとか冷静を装った。
あの程度の嫌味に慣れたとはいえ、やはりどこか胸が痛むのを感じた。
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