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「ふう、」
熱い湯船に浸かれば、疲れている体にとってそれが心地よく感じる。
髪の毛を一つに纏めあげ、肩までゆっくりと浸かった。
「肌キレイね、羨ましいわ。」
「そう、ですか?野ばらさんの方がずっと綺麗ですよ?」
「若い肌には敵わないわ、ほら、」
隣に入ってきた野ばらに肌をみせられたが、彼女は手入れをしているのであろう。
触れた肌は絹のように滑らかで、それを本人に伝えると嬉しそうに笑っていた。
「やっぱり女の子はメニアック、大好き!」
「わっ、野ばらさん!」
野ばらにぎゅっと抱き締められ、その勢いでバランスを崩しそうになったが、なんとか堪えることができた。
「とっても良い表情している、そう思うよね、カルタちゃん?」
「うん、なまえちゃん、毎日キラキラしてる。」
「っ、」
的確な二人の言葉に思わず顔が熱くなる。
どうやら周りにも分かるくらいだそうだ。
「でも、それは凄く嬉しいことなのよ、」
「嬉しいこと?」
「私もなまえちゃんが大好きよ、カルタちゃんもみんな、みーんな。だからそうやって毎日好きな人が幸せそうに笑ってくれて嬉しいのよ!」
野ばらの言葉は不思議だった。
心の中にスッと入ってきて、ぽかぽと暖かいものへと変わる。
幸せそう笑っているのなら、それはここにいるおかげだろう。
ここにいるから笑えて、ここにいるから幸せを感じることができる。
それは自分の力ではない、みんながいるからこそなし得たこと。
「もう!可愛いんだからー!」
カルタを引き寄せた野ばらは、なまえと一緒に力強く抱き締めた。
「の、野ばらさん!どこ触っているんですか!」
「うふふ、女の子同士いいじゃない!」
「そういう問題じゃなくて……か、カルタちゃん!なに食べてるの!?」
「温泉饅頭、食べる?」
「裸で温泉饅頭を頬張るカルタちゃん、メニアック!!」
笑い声が絶えない。
心から幸せだと感じる。
いま、この瞬間をもっと大事にしたい。
そう思えた。
続く
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