2
それから夏が来てあっという間に過ぎて、学校が始まった。
文化祭という一大イベントがあるようで、学校全体が賑わいを見せていた。
「あ、メール。」
なまえは自分の携帯が鳴っていることに気付き、ポケットから携帯を取り出した。
そこにはいつの間にか人のアドレスを入手したのか、蜻蛉からのメールだ。
しかも写真が添付されており、それを開くと泣きながら夏目に後ろから捕まえられた渡狸の写真。
よく見ると彼はメイドの格好をしている。
(渡狸くん…………)
「なまえさま?着替えは終わりましたか?」
カーテンの向こう側から双熾の声が聞こえ、ふと我に返った。
「こ、これは本気ですか………」
「はい、」
カーテン越しに会話を繰り広げたが、最後は双熾によってカーテンを開けなくてはならない状況になってしまった。
「やっぱり、こんな恥ずかしい格好、無理です……」
鏡に映った自分の姿にどうして良いが分からないが、とりあえず早く着替えたいのは事実。
それを双熾に訴えても彼は表情を崩す所か、
その表情が一瞬黒いものに見えてしまった。
「ここは、そういうお店ですよね?」
「そ、そうですけど!」
文化祭の催しだと思えばなんとかなる、そう自分に言い聞かせて双熾の前に出ることにした。
コスプレ喫茶に嬉しそうに入るなり、ぜひこれに着替えて欲しいと頼まれた時は断るつもりだったが、この笑みにはどうも勝てなかった。
「っ、」
「そ、双熾さん!?」
なまえの姿を見るなり、双熾は突然胸を押さえて崩れ落ちた。
驚いて側に寄ったが、とても息遣いが乱れている。
「なまえさまのメイド服………あぁ、なんと……」
「メイドさーん!メニアック!!ご奉仕お願いします!」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえたが、目の前に倒れた彼をどうするかが最優先。
それよりも、この服を早く着替えたくて仕方ない。
双熾がこのまま連れて帰りたいなどと呟いていた為、身に危険を感じてしまった。
.
[
back]