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二人で落ち着いていると眠気に襲われてしまい、
そろそろ寝た方が良いと双熾に言われた。
双熾はソファーで休むといったが、出来ればちゃんとした布団とかで休んでもらいたかったが、
生憎この部屋にはお客さん用の布団などは用意していなかったのだ。
「では、僕はソファーの方におりますので、なにかあったら声を掛けてください。」
部屋の明かりは落とされ、月の光だけが優しく部屋を包む。
ベッドに入ると眠気はどこかへ飛んでしまい、
向こう側にいる双熾が気になって仕方なかった。
「あ、あの………」
「どうかなさいましたか、」
遠慮がちに声を掛けると、双熾の優しい声が耳に届いた。
それだけなのにどこか安心感があったのだ。
「いえ、ただ眠気が少し覚めたなって……」
「大丈夫ですか?なにか温かい飲み物でも……」
「あっ、そこまでは本当に大丈夫ですから!双熾さんも疲れているのにすみません、」
しまったと思ってしまった。
双熾に迷惑を掛けてしまったと思って思わず謝った。
すると、小さく笑う声が聞こえた。
「僕がここに居させていただけるだけでも恐縮です、ですから僕に出来ることがあったら全てやりたいだけなんですよ。」
「嬉しいですけど、自分で出来ることはなるべくやりたいです………」
「知っております、ですがたまには甘えて欲しいって思っいます。」
その言葉が切れると、ベッドの近くに双熾の気配がした。
「ちゃんと我慢しようと抑えていたのに、あなたはズルいお方ですね。」
「あ……」
ベッドサイドまで双熾は足を進め、その場に腰を落とした。
そしてゆっくりなまえの手を取って微笑んだ。
「眠れるまで、こうして良いですか?」
目が慣れている為、薄暗くても双熾の表情はよく分かる。
そのような顔をされてこの雰囲気の中でそれを断ることは出来ない。
なまえは頷くと小さな声でお礼を言われた。
「こうしていると、なまえさまの温もりで眠れる気がします。」
「わ、私は緊張して眠れません……」
「大丈夫です、これ以上は何もしませんから。今日だけは許してください。」
「今日だけじゃなくて、眠れない時はこうして一緒にお話とかしましょう!私も双熾の為に出来ることはやりたいんです。」
そう伝えると双熾は驚いたような表情に一瞬なった。
そして、額に小さな温もりが降り注いだ。
「あまり可愛らしいことを言わないでください、持たないです……」
「えっ!?」
「おやすみなさい、」
双熾はニッコリと笑い、これ以上なにも言うことが出来なかった。
そしてこの手に繋がれた温もりに身を委ね、深く深く眠りについた。
続く
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