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「そういうことだ、お前はこれからは自分の足でこの世界を見ていける。その隣はミケじゃないとダメだってことだ。」


同じ先祖返りの仲間、


最初はそんな小さなコミュニティ。


でも、今は大切な存在になっていて、
一人一人の幸せを願っている。


「ありがとう………ありがとう、みんな…」

「あーん、もう!その帯をほどかせてあげたいわ!」

「おまわりさーん!」


笑いが不思議と込み上げてくる。


一緒にいるだけで、ここにいるだけで幸せな気持ちになる。


幸せの形はそれぞれだけど、


私は彼らといることも幸せの一つだと、この瞬間に思えたから。


「じゃあ、お鍋食べましょう!お腹空いたでしょ?」

「はい、」


テーブルを再び囲み、夕食を再開させた。






























「じゃあ、私は帰るわね。」

「ありがとうございました、本当に菖蒲さんには最後までお世話になりました。」


こっそりと抜け出した菖蒲は帰り支度をし、狗崎家を後にしようとした。


後から追い掛けてきた双熾に足を止め、じっとその顔を見つめた。


「いい顔してる、」

「え?」

「昔見たあなたの顔と違う、幸せなのよね?」


菖蒲の思わぬ言葉に一瞬止まった。


「私はなまえちゃんもそうだけど、双熾にもちゃんとした人としての温もりも幸せも知って欲しかった。」


家庭の温かさ、人の温もり、心をほとんど知らずに育った。
どこか危うさがあって、張り付けられたような笑顔に違和感を常に感じて。


それでも、


「あなたがなまえちゃんと一緒にいる時の顔、あんなの初めて見た。その時に思ったの、あなたの幸せはここにあるって。」

「菖蒲さん………」

「境遇が似ているから同情していると思ったけど、ちゃんとお互いの心の奥底を分かち合っていたのね、」


きっと互いに互いを必要としていた。


もう我慢しなくていい、
もう何にも縛られなくていい。


有りのままに生きて欲しかった。


「安心したわ、」

「はい、」

「ちゃんと幸せにしなさいよ、泣かせたりしたら承知しないから。」


菖蒲の言葉に双熾は小さく笑い、しっかりと返事をした。


たくさんの人の支えがあった、このことを絶対に忘れてはならない。


一人の力ではここまで歩いてこられない、
そのことを生涯忘れず、その人達の想いに応えていこう。


「じゃあ、帰るわね。」

「お気をつけて、お帰り下さい。」


迎えの車に乗った菖蒲を見えなくなるまで頭を下げて見送った。


ふと、頭を上げて空を仰いだ。


夜空に散りばめられた無数の星を見つめ、双熾は小さくため息をついた。


きっと、この先もなにかが待ち受けて、
どうしようもなくて立ち止まる時が来るかもしれない。


今度は二人でそれを乗り越えよう。


二人でなら何も怖いものはない。


不思議と心からそう思えた。










続く
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