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双熾に再び抱えられ、数時間前に出た狗崎家へと足を運んだ。
このまま連れ去ってもいいと双熾は言ったが、
さすがにあのままにしておく訳にもいかなかった。
一先ず、出迎えてくれた田所の案内で客間へ向かうことにした。
両親は既に仕事へ戻ったとのことで、少しだけ安心していた自分がいた。
「あ、おかえりー☆」
「おー、お前ら遅かったな。先に食ってるぞ。」
客間へ通されると、真ん中に鍋が置かれて、くつろいでいる皆の姿だった。
後ろにいた双熾は、美味しそうな香りですね等と呑気なことを言っていた。
しかし、なまえは口を開けたまま言葉を発することが出来ない。
「んー!着物メニアック!!その下は下着着けてる?ね?」
「すいませーん、ここに犯罪者いますー」
「の、野ばらさん………」
相変わらずの様子に溜め息をつくしかなかった。
でも、不思議と場所は違えどもここに帰ってきたという実感が湧いてくるのだ。
「お二人のお食事もご用意致します。お待ち下さい。」
後ろで控えていた田所はそう言い、
なまえと双熾の食事を用意してもらったのだ。
お昼もあまり食べてない為、今になってから急にお腹が空き始めたのだった。
「そういえば、蜻蛉さんと菖蒲さんは……」
「それがねー、すっごくおかしいのよ!」
「は、はぁ?」
お腹を抱えで突如笑い出す野ばら。
彼女の行動が全く理解出来ず、とりあえず笑いが収まるまで待つことにした。
その間になまえと双熾の分の食事が運ばれ、
連勝は器に鍋の具材を取り、二人に渡した。
「まぁ、あれだ。お前は本当に自由になったんだ。」
「え?」
幼馴染みまで何を言い出すのかと思えば、
いよいよ頭が混乱してきたのだ。
入り口の襖がそっと開き、全員の視線がそこに注がれた。
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