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お金さえ貰えれば、特になにもいらない。


自由が欲しくて、色んな人を欺いてそれで満足していて。


でも、彼女は全く違った。


こんな自分のことを出会って幸せだと言った。
見てきた世界を教えて、キラキラした純粋な瞳で一つ一つに耳を傾けてくれ笑ってくれた。


この笑顔をずっと見たい、守りたい。


そう思えたから。


「愛してます。あなたをずっとずっと」

「えっ!あ、あの……」


きっと"好き"なんかでは足りない。


欲しくて欲しくて堪らない。
彼女の笑顔も哀しみも全て背負っていく覚悟だ。


それを全て話してぶつけた上で今回のことを託された。
あなたなら、幸せに出来るだろうと。


「僕は、あなたを守る為なら何でも出来ます。半端な覚悟ではありません。ですから」


この気持ちに偽りはない。
全て、本当の僕の気持ち。


それでも、あなたは悲しそうな顔をしていた。


「双熾さんのバカ!」

「え、」


瞳に涙を溜めながら、彼女はそう叫んだ。


「私の為だからって、自分の身を私の為に使わないでください!」

「ですが」

「どうして、一緒にって言ってくれないんですか?いつも、いつも身を張って傷付くのは双熾さんじゃないですか」


掴んでいた手は少しだけ震えている。


その時、彼女の気持ちが分かった気がした。


「私は大切な人に傷付いて欲しくない、だから………今度は二人で、二人で全部乗り越えて行きたい!」

「なまえさま…」

「好きだから、双熾さんが何より好きだから。もう一人で全部抱えて傷付いて欲しくない」

「っ、」


この気持ちは昔からずっと気付いていた気持ち。


記憶を無くす前も、そして春に出会ったあの日も。
ずっと彼に対して同じ気持ちを持っていた。


伝える勇気もなくて、ずっとそこに立ち止まったまま。


伝えたかった、


側にいて、傷付かないように身を張っていた彼の気持ちにずっと応えたかった。










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