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「田所さん達は本当はあなたをずっと普通の女の子として生きて欲しいと願っていました」
「そんな……」
「あなたとあの時最後にお話ができたのも、あなたが記憶を無くしてしまったということも、全て彼に教えていただきました」
初めて知ったことだった。
あの日、双熾と最後に別れを告げられたのも、
自分の記憶が無くなってしまったということも全て執事の田所から聞いたことだったとは。
本当は実の娘をずっと軟禁している狗崎の当主達に誰もが疑問を持っていた。
だが、彼らは狗崎家の当主達の下に仕える者。
主の意志に背いてはならないと、長年そうやってきた。
「今日の蜻蛉さまの件も全て事前に教えていただいて、それで……」
家の為に無理矢理軟禁され、結婚も恋愛すら自由になれないのはあまりにも酷だと。
田所が異を唱え、皆に呼び掛けてのだと言う。
そして野ばら達とは別に動いていた双熾、
でも、そこで一つの疑問が生まれた。
いくら執事達が自分と蜻蛉を結婚させないとは言え、どうして双熾に全てを託したのか。
ここまで聞くと蜻蛉か菖蒲に相談することも出来たはず。
それを双熾に話すと、彼は目を丸くして短く溜め息をついた。
「それは、本気で言っているのでしょうか?」
「だっておかしいじゃないですか!いくらSSの双熾さんでも、あの人達に逆らったら危ないですし!」
「困りましたね」
複雑そうな表情を浮かべ、双熾は本気で困ったようになまえを見つめた。
そして、自分の手に乗せられた小さな手をそっともう片方の手で取った。
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