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暫くして落ち着くと、ゆっくりと双熾の方から今回のことを話始めた。
「今日のことは、知っておりました。そろそろではないかと、ずっと思っておりましたので」
「蜻蛉さんは私たち以外はこのことを知らないって……」
「いえ、僕は田所さんから聞いたのですよ」
双熾からその名前が出るとは思わず、言葉が咄嗟に出てこない。
予想通りの反応をされ、双熾は小さく笑った。
「少し長くなりますが、僕のお話を聞いていただけますか?」
「はい」
ありがとうございますと双熾は短く告げ、過去の話から始めた。
一度だけ聞いたことがある双熾の過去、
でも彼が話している内容は一切ぼかさず全てを語った。
御狐神を抜け出す為に行ったこと、
一族の上に立つ者に近付き、様々なことをした。
そんな話を今度こそ隠さずに全てを打ち明けたのだ。
「それから……」
双熾の言葉は途中で止まる。
なまえの手が自分の手に重ねてきたからだ。
そっと包み込むように、柔らかな温もりがこの手を包んでいた。
「大丈夫です、続けて下さい」
「なまえさま……」
無意識の内に緊張をしていた、あの時は話すことが出来なかった過去を。
彼女に全てを話したら、きっと軽蔑されるかもしれない。
でも、それは仕方のないことだとずっと思っていた。
それでも、やはりこれを話すことに緊張はあったみたいだ。
そして包み込まれた温もりが胸の奥に徐々に染み渡っていく。
双熾はそっと目を閉じてその温もりに身を任せた。
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