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すると、隣の部屋の襖と入口の襖が同時に開いたのだった。
「なまえさま!」
「そのお見合いちょっと待ったー!!」
声か重なったのはほとんど同時で、最早なにが起きているのか理解出来ない。
隣の部屋からは何故か野ばら達がいて、
部屋の入口からは双熾がいたのだ。
「な、なんであんたがここにいるのよ!」
「それはこちらの台詞です」
「私達はお見合いの邪魔しに来たの!この変態になまえちゃんを渡さないわよ!」
野ばらが狗崎家の当主に向かってビシッと言い放ち、
後ろでは夏目の笑い声が響く。
この状況は一体なんなのか、理解するのに時間が掛かるのだった。
「早く行きなさい、あなた達が本当に幸せだと思うのなら。その心のままに従いなさい」
「略奪愛、悦いぞ!!はははー!」
固まっているなまえに向かって菖蒲と蜻蛉はそう言い、双熾はそれに頷いて手を掴んだ。
「少し、失礼します」
「えっ!?」
驚いている間に身体はふわりと浮き、気付けば一瞬で双熾に横抱きにされていた。
その場から双熾はそのまま離れ、呆気に取られた両親は一瞬言葉が出なかったがみるみる内に顔は怒りに変わっている。
「こ、こんなことが許されるのか!」
「うるさいわね、いきなり大声出さないでよ!」
「悦いぞ、略奪!!ははははー!」
後ろから父親の声やら、野ばら達の声が聞こえてくるがこの状況でどう対応して良いのか。
そしてこれをそのままにして良いのか不安になり、双熾の方を思わず見てしまった。
「あの……」
「今はこのまま、僕に誘拐されてもらえませんか?」
双熾はにっこり笑いながらそう言い、思わず混乱する頭で小さく頷いてしまった。
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