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自由、
それは最も憧れていたもの。
でも、教えてもらった。
心が自由なら全てが変わる。
この心は誰のものでもない、自分のものだと。
「っ、」
なまえもう一度手のひらを握り締め、その場を立ち上がった。
「ごめんなさい!私、蜻蛉さんとは結婚出来ません!」
そう力いっぱい言うと、両親は絶句したように口元を押さえた。
その顔を見た途端に何かを壊したような気がして負けそうになった。
しかし、目の前の蜻蛉と菖蒲は目を細めて笑っていたいたのだ。
「何を言っているのか分かっているのか!」
「分かってます、私は蜻蛉さんとは結婚しません」
きっぱりともう一度言うと、二人の表情は青ざめたものへと変わっていく。
「確かに蜻蛉さんはよく分かんないとこで優しいし、とても良い人です。でも私は好きでもない人と結婚することは出来ません」
答えは最初から決まっていた。
でも、それを彼らに伝える勇気がなかっただけ。
ずっと運命だから仕方がないと諦めていた。
先祖返りで生まれた以上、この運命を受け入れようと何度も思っていた。
でも、それでは駄目なのだとようやく気付いたから。
ずっとずっと、それを言いたかった。
心だけは自由にして欲しいと。
「それに、心に決めた大切な人がいます。最近までそれが何なのか分からなかったけど、ようやく気付きました」
側にあったのに、その想いに気付かなかった。
気付いていたけど、それを形に出来なかったという方が正しい。
ずっと側にあった想い、
これだけは、紛れもない狗崎なまえだけの意志。
「ふふふ、ははははは!」
蜻蛉が肩を震わせて笑っていた。
その姿に張り詰めていた部屋の緊張が一気に解かれた。
「やはり貴様は私を楽しませてくれる!さすがS!」
「はい?」
「まさか花嫁殿からこの場を壊してくれるとは!我々はいらなかったな」
蜻蛉の言葉の意味がさっぱり分からず、狗崎家の三人は呆気に取られた。
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