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車は家の門を潜り、ようやく屋敷が見えてきた。
ここを出てからそんなに経っていない気がするのに、
酷く懐かしいようなきがした。
「では、お部屋で準備等をしていただき、午後1時に青鬼院様と昼食になります」
色々な予定を言われたが、頭に入っていたので適当に相槌を打って屋敷の中へ入ろうとした。
「おかえりなさいませ、なまえ様」
入口には執事の田所がいて、丁寧にお辞儀をして出迎えた。
『おかえりなさい、なまえさま』
『おー、おかえりー』
『おかえりなさい!なまえちゃん』
『おっかえりー☆なまえたん!』
(あ…………)
ふと重なった、日常の光景。
そうだ、あそこに来てから"おかえりなさい"という言葉が好きになって。
そして、
「ただいま、田所」
"おかえりなさい"と言えば"ただいま"
そんな当たり前のやり取りにいつも幸せを感じていたのだ。
「……お部屋にご案内します」
「うん」
「旦那様と奥様は仕事を終えられてからお見えになります。直接客間にいらっしゃるとのことです」
両親に直接ここで会えるとは思っていなかった。
直接、青鬼院との食事の席に来るとのことだ。
でも、正直その方が助かったと思ってしまう。
ここで会っても何を話していいか分からない。
お互いにとってもその方が良かったのだ。
「お父様とお母様は………元気?」
「ええ、お変わりないですよ」
「そう……」
特に気にしたこともないのに、なぜか今日に限ってそれが気になったのだ。
自分でも不思議なくらい。
(大丈夫かな……)
青く晴れ渡る空を仰ぎ、静かに深呼吸をした。
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