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マンションからそんなに遠くない距離、
二人はゆっくり土手沿いを歩いていた。
自転車やランニングで行き交う人々。
キャッチボールをしてはしゃぐ子供たち。
草の上に座っておしゃべりする恋人。
色んな人達が目の前にいて、
その光景はどれも幸せそうに見えた。
「凄いですね、」
「凄いとは?」
「ここにいる人達がみんな幸せそうに見えるんです、何気無い光景かもしれない、でもひとつひとつが綺麗な色に見えます。」
少し前までは、世界にこんな光景があるとは思いもしなかった。
あったとしても、想像していたものと全く違う。
想像よりもずっとずっとキラキラしている。
世界はこんなにも広くて穏やかだ。
「本当に変わりましたね、あなたは。」
ふと立ち止まった双熾、なまえも同じく足を止めて双熾の方を振り返った。
彼の目は優しく真っ直ぐに見つめていたのだ。
「自由を望んでいたのに運命を受け入れてあの中に留まった。」
「双熾、さん……」
空の下を歩きたい、
そんな小さな願いが少女の願い。
少女はたくさんのことを乗り越えて、今こうして自由に空の下を歩いている。
「大切なのは心です、心が自由を感じれば不思議と周りも輝いて見えます。」
「心………」
「はい、なまえさまの心が変わったから世界が輝いて見えるのですよ。」
少しずつ、でも確かに一歩前へ進んでいる。
自らの力で前へ進んで、過去も乗り越えた。
そして心が強くなっていく。
誰よりも側で見守っていたから、彼女の成長がよく分かる。
そしてその成長を嬉しいと感じていた。
手を差し伸べるのは簡単だが、それに頼ってばかりでは前に進めない。
しかし彼女はそれに頼らず自分で過去を乗り越えた。
それがどんなに嬉しいことか、言葉で表現することは出来ない。
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