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「はぁ……」
「なまえさま?」
「あ……」
双熾の呼び掛けにようやく気付き、なまえは顔を上げた。
そこには心配そうにこちらを見つめる双熾の姿があったのだ。
「昼食、あまりお召し上がりになっていませんが」
「すみません、食欲があまりなくて……」
「では、何か軽いものをお持ちしましょうか?」
「あの、大丈夫です………すみません」
そう言うと双熾は、分かりましたと言って微笑んだ。
今日は土曜日である為学校は休みで、カルタと渡狸は出掛けてしまった。
他の者達も各々の用事があると言っていない。
ラウンジには双熾と二人きりだったのだ。
「この後のご予定はありますか?」
「特にないですけど……」
明日のことを考えると、どこかに出掛けるなどということは考えられなかった。
買い物もカルタに誘われたが、二人の邪魔をしてはいけないと断ってしまったのだ。
「あ、」
「どうかなさいましたか?」
突然何かを思い出したように声を上げたなまえ。
くるりと双熾の方へ体を向け、真剣な面持ちで口を開いた。
「あの、お散歩。行きませんか?」
「散歩、ですか?」
「この近くに土手があるって聞いたので、散歩コースにはいいって連勝から聞いたので……」
突然すぎたかと思い、恐る恐る双熾に聞いてみた。
中々反応を示さない双熾に不安になり、彼の顔を少し覗いた。
すると、双熾の目から涙が溢れたのだった。
「なまえさまからお誘いいただけるとは……本当に死ぬほど嬉しくて……」
「え、いや、あの」
軽い気分転換のつもりだったが、そこまでいくとは考えもしなかった。
しかし、自分の頬が少し緩んでいたことに気付いていなかったのだ。
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