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(遅くなっちゃった……)
辺りはすっかり暗くなっていて、荷物を抱えたまま少しだけ早歩きでマンションへ向かう。
補習を終え、家庭科の教師がラッピング用の袋などをくれた。
それに一つずつ包んでいたらすっかり遅くなってしまったのだ。
「明るい所から帰らなきゃ」
夜は危険が色々と潜む。
特に先祖返りにとっては危険が多い。
今日は双熾を含めて皆を驚かせたかったので、双熾が迎えに来ると言ったがそれを断った。
こんなに遅くなるなら迎えに来てもらえば良かったと考えたが、
わざわざ迎えに来てもらうのも申し訳ない気がして早々に帰ることを決意した。
「あそこを曲がれば……」
目の前の曲がり角を曲がればもうすぐマンションに着く。
逸る気持ちをなんとか抑えながら目的地まで歩く。
「あれ……」
角を曲がり、マンションが見えてきた所で違和感を覚える。
マンションから少し離れた場所に見覚えのある車が一台停まっていたからだ。
足を止めると車のドアが開き、よく見知った壮年の男性が現れた。
「お久し振りです、なまえ様」
「あなたは……」
その顔を忘れるはずがない、小さい頃からずっと自分の世話をしてくれた執事の田所。
でも、そんな彼が何故ここにいるのか。
全く状況が読めないなまえに、壮年は口を開いた。
「旦那様からご伝言をお預かりしました。田所はそれを伝えに参りました」
「え……」
彼がいう旦那とは狗崎の主、すなわちなまえの父親だ。
あまりの突然の出来事に立ち竦んでしまった。
「このような場所でお伝えするのはとても失礼なことだと承知しております。ですが、あそこでお話するようなことではないのでご理解ください」
「それって……」
間を少し空けると、田所は顔色一つ変えずに告げた。
「正式に青鬼院家蜻蛉様とのご婚約が決まりました。つきましては両家で顔合わせをするので、今週末に本家へお戻りください」
どこか遠いもののように聞こえる。
でも、それは現実だった。
続く
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