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「それにしても蜻たん、今回はどこいってたのー?」

「沖縄だ!」


蜻蛉は夏目に土産だと言って鞭をどこからか取り出して差し出す。


沖縄と鞭が全く関係ないと誰もが思ったが、それを口に出すのが億劫になってしまった。


「貴様にもやろう、花嫁殿!」

「丁重にお断りします」


ズバッと言い退けたが、蜻蛉はただ声高らかに笑うだけだ。


それに慣れているのか、なまえはうんざりしたようにため息をついた。


「珍しいわね、なまえちゃんがあんなに誰かに対して拒否するの……」

「それだけ蜻たんが苦手なんだよねー?」

「心を読まないでください、夏目さん」


蜻蛉が突然ここに来てから慌ただしくもしたが、いつもの妖館だ。


そう思うと、ようやくここに帰って来たのだと実感して、うれしくなる。
ただ一人を除いては。


「なまえさま、大丈夫ですか?」

「大丈夫ですけど………双熾さんって、蜻蛉さんのSSだったんですか?」

「昔少しだけ、仕えていただけですよ。色々とお世話になりました」


それについては初耳だった、別に知っていたからどうなるというものでもない。


自分に知らないことがあっても当然のこと。


それに、蜻蛉は婚約者といっても両親や一族が力を持っている鬼を欲している。
それだけで勝手に彼を婚約者と決められて、過去に何回か会ったことがある。


しかし、どうもこの男だけは苦手で慣れない。


だが、両親や一族は違う。


鬼という力を手に入れればもっと家が発展するとしか考えていない。


いくらこちらが嫌だと抵抗しても、この男と婚約して子を成すという運命は昔から決められている。


それに、どうしてここで暮らすことを許可したのか分かった。


蜻蛉がいるから、それにもっと近付ける為にここに住むことを許したのだ。


そんなことに今更気付いて悔やんでも仕方なかったが、結局これも両親の思惑通りだと思うとやりきれなかった。


「そういえば、記憶が戻ったと聞いた」

「どこでそんな情報を仕入れ……」

「おっと!それは秘密だ。教えない私はかなりのドS!」


ここまでくるともう病気だと思っていた。


これになんと返事をしていいか分からないが、とりあえず無視をしようとなまえは決めた。


「近々、私たちの結婚をどうするか決めるぞ!」

「だから、それは……」

「貴様の両親らが今それで動いている」


蜻蛉の口から両親のことが出てなまえは言葉を失う。


「私はそれもあって戻ってきたのだからな!」


蜻蛉の笑い声がやけに遠くに聞こえる。


どうやら、この地に平穏というものはないらしい。


そんなことをぼんやり考えながら、気付かない内に手をぎゅっと握っていた。









続く
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