3
ドアを開けるといつものメンバーがいたが、野ばらが殺気立っていた。
それを傍観するように、遠くにいる他の者達は相変わらずだ。
「あ、おかえりー!二人とも」
ラウンジに入ってきた二人に夏目が気付いた。
「あの、なにかあったんですか?」
遠くにいる野ばらを見やり、夏目は面白そうに笑っていた。
幼馴染みはのんびりとお茶をすすって、カルタはご飯に集中して、渡狸に至っては床にたおれている。
あまりの光景に言葉を失い、とりあえず野ばらに近付いた。
「あの、野ばら………」
「近寄らないで、凍らすわよ」
「は?」
「悦いぞ、その反抗的な眼!まさにドS!!」
「近寄らないで!この……」
野ばらはどうやら奥にいる人物と話をしているようで、どこかで聞き覚えのある声になまえは顔を歪めた。
「野ばらちゃーん、なまえたん帰って来てるよ」
「なんですって!それを早く……あら」
夏目の声に反応した野ばらは振り返り、姿を確認した。
「やーん!気付かなかったわ、メニアック!」
「は、はぁ、ただいま、帰りました……」
「おお!ついに帰ってきたか!」
野ばらの声に続いた声に、野ばらは奥にいた人物を強く睨む。
彼の姿を見ると、予想が当たってしまったことに酷く後悔をした。
「待ちくたびれたぞ、花嫁殿!私を待たせるとは、まさにS!」
「男がなまえちゃんに近寄らないで、ていうか、花嫁とか気持ち悪いこと言うんじゃないわよ!」
「先ほどから説明しているだろう」
青年は高らかに笑い、なまえに向かって指をさした。
「私は青鬼院蜻蛉、2号室の住人でありカルタの主人、そして御狐神双熾の元主人で、狗崎なまえの婚約者だ!」
「肩書き長すぎるわ、ねぇ、本当なの?」
「本当、です………ただ両親が彼との結婚を望んでいるだけで………私はお断りです。というより、なんでここに住んでいるんですか?一言も聞いていません!」
「相変わらずの反応だな、その反抗心もなかなか悦いぞ!!」
蜻蛉の言葉にうんざりするなまえだった。
「ま、ともあれ久々の再会となまえちゃんの退院祝いなんだからさ、楽しくパーティーしようよ!」
「パーティー………なまえちゃん、おかえり」
「この変態のせいでちゃんと言えなかったわね、おかえり、なまえちゃん」
「おかえり、なまえ」
一斉にみんなからのおかえりに、一瞬戸惑ったが、ずっと言いたかったこの言葉。
素直に言えるなら………
「ただいま、みんな」
「私は待ってないぞ、おっと寂しがるのか!ははっ、お前はMも持っているのだな!!」
「っ、あの、蜻蛉さん。ぶち壊さないでください」
「ははは、反抗的な眼が堪らない!ぞくぞくするぞ」
目の前の男を本気で絞めてやりたい、そう思ったのはこれで何度目だろうか。
.
[
back]