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「どうか、顔を上げてください。なまえさま」
そっと手を取って、双熾はベッドの上のなまえと目線を合わせた。
「確かに悲しかった、そしてあなたを守れず傷付けた。僕自身が弱かったから、身も心も」
狗崎に近付いたのは、単に金回りがよかったから。
ただそれだけのはずだった。
そして自暴自棄になっていた過去の自分、そんな自分を救ってくれたのは間違いなく、狗崎なまえだった。
彼女には感謝をしてもしきれないほど。
「僕は、あなたに出会って幸せです。あなたが僕に出会って幸せだったと言われたように、僕も幸せです」
「っ、」
「笑ってください、これからもずっとあなたの笑顔を見たいです。そして、それを僕に守らせてください」
例えこの身になにがあろうと、彼女だけはずっとずっと守りたい。
他の誰かじゃなく、誰かの代わりでもない。
狗崎なまえだから、彼女だから守りたい。
「あの、」
「はい、なまえさま」
「私、ちゃんと強くなりました。ここに来てから沢山のことを学んで、あなたにまた出会いました。双熾さんとの約束、ちゃんと果たしたいからここまで来ました」
なまえの思わぬ言葉に双熾は言葉が出なかった。
それでもなまえは言葉を続けた。
「空の下を、一緒に歩いて下さい」
「なまえさま………」
「それから、私をずっと守ってくれて、ありがとうございました」
「なまえさま、なまえさまっ………」
ふわりと双熾はなまえの体を包んだ。
目の前の少女を抱き締めずにはいられない。
愛しくて、愛しくて。
そして、眩しかった。
いつも真っ直ぐな彼女は簡単に心を暖かくしてくれる。
いつも欲しい言葉をくれた。
本当は思い出して欲しくなかった、だけど再会した時にもしかしたらという期待を抱いていた。
思い出して欲しいような、欲しくないような。
矛盾する気持ち。
だけど、自分に関する記憶がなくても彼女は変わらず優しくて暖かい。
どんな彼女でも愛してる、
その温もりも、眩しい笑顔も全部、ぜんぶ抱き締めたい。
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