2




「どうか、顔を上げてください。なまえさま」


そっと手を取って、双熾はベッドの上のなまえと目線を合わせた。


「確かに悲しかった、そしてあなたを守れず傷付けた。僕自身が弱かったから、身も心も」


狗崎に近付いたのは、単に金回りがよかったから。


ただそれだけのはずだった。


そして自暴自棄になっていた過去の自分、そんな自分を救ってくれたのは間違いなく、狗崎なまえだった。


彼女には感謝をしてもしきれないほど。


「僕は、あなたに出会って幸せです。あなたが僕に出会って幸せだったと言われたように、僕も幸せです」

「っ、」

「笑ってください、これからもずっとあなたの笑顔を見たいです。そして、それを僕に守らせてください」


例えこの身になにがあろうと、彼女だけはずっとずっと守りたい。


他の誰かじゃなく、誰かの代わりでもない。


狗崎なまえだから、彼女だから守りたい。


「あの、」

「はい、なまえさま」

「私、ちゃんと強くなりました。ここに来てから沢山のことを学んで、あなたにまた出会いました。双熾さんとの約束、ちゃんと果たしたいからここまで来ました」


なまえの思わぬ言葉に双熾は言葉が出なかった。


それでもなまえは言葉を続けた。


「空の下を、一緒に歩いて下さい」

「なまえさま………」

「それから、私をずっと守ってくれて、ありがとうございました」

「なまえさま、なまえさまっ………」


ふわりと双熾はなまえの体を包んだ。


目の前の少女を抱き締めずにはいられない。


愛しくて、愛しくて。


そして、眩しかった。


いつも真っ直ぐな彼女は簡単に心を暖かくしてくれる。


いつも欲しい言葉をくれた。


本当は思い出して欲しくなかった、だけど再会した時にもしかしたらという期待を抱いていた。


思い出して欲しいような、欲しくないような。


矛盾する気持ち。


だけど、自分に関する記憶がなくても彼女は変わらず優しくて暖かい。


どんな彼女でも愛してる、


その温もりも、眩しい笑顔も全部、ぜんぶ抱き締めたい。






.

prev next

[back]


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -