※ 帰ってきたばかりのタッツミー



「うそ、みたい……」
 有里が弱々しく吐きだす。現役時代よりたしかに老けた、けれどまだまだ三十代で若い目の前の人は、いつもみたいに誰も寄せ付けないような、ある意味では冷たい、けれど、パッと見には温かでやわらかな笑みを浮かべた。
「ほ〜んと」
 ふに。
 有里は達海にほっぺたをゆるく摘まれて、ふにふにと弄くる。指でくにくにとやる。こういう所作は、現役の頃となんら変わりない。いたずらっ子の少年みたいでかわいい、と有里が思えたのは、年齢のせいだろうか。それとも──?
「やぁ、めてよ!」
 達海の手を振り払う。そこまで嫌だと感じたわけではなかった。けれど、思いきり、といえるほどにぶんっ! と風を切る速さで有里は腕を振っていた。
 そこで、バッチーン、と当たるほどにぼんくらではないのが、達海という人が現役の頃と、そう衰えてはいないという証だった。達海はその動きを最小の動きで避け、
「あっ、ぶねーーー…」といった。
 だが、すぐさま達海は笑って有里に向き合う。
「お久しブリーフ」
 いつのギャグだよ。あの黄色い芸人が浮かんで、そのオヤジギャグにげんなりした顔を有里はわざと作る。なぜって? 帰国を、バカイヌみたいに尻尾フリフリ喜ぶサマなんて、こんなお調子者に見せてやりたくない、と咄嗟に有里は思ったのだ。
 ほんとうは、嬉しくてうれしくてしかたなかったのだけれど。焦がれるほどに憧れた貴方へ。



※※※長く書く予定がこれ以上書けず断念。暫く前のものにちょびっと付け足ししたダケ。。

(ジャイキリ×タツユリ)

2018/03/21 08:57:30