読めぬ男



病床に臥せた半兵衛がものを言う。
「僕はあまりもちそうにない」
やめてください。最初はそう告げていた。だが、回を重ねるごとに咎めの言葉も減っていった。どうやら聴いている側も繰り返し聞かされれば慣れて行くものらしい。
確かに半兵衛の命はそう長くはないのだろう。誰が見ても彼の不健康さは分かる。半兵衛の寝間着の裾に血が付いている。また昨晩吐血したのだろうか。だが、その光景にも慣れてしまった。
「三成君、」
半兵衛が目の前に静かに座る男の名を呼ぶ。同じ肌の白さと、銀の髪を持つ男の名を。
「何ですか」
呼ばれた男は、全く感情ない声で返答した。
表情に出さず半兵衛はその無表情さに、心中狼狽しかけた。が、ふと気付いて三成の銀髪を見つめながら平常心を取り戻す。
半兵衛は銀髪を見ると平常心になる性質があるらしい。それは自分の髪色のせいがあるのは明白であろう。
「三成君、…秀吉を、頼む」
半兵衛が口にした言葉、それは、…別れの、本気の言葉であった。
三成はどうして、急に−−半兵衛にしてみれば急ではなかったのかもしれない。勿論、誰の目から見ても半兵衛はどんどん弱ってきていたのだが−−そんな事を彼が言い始めたのか分からない。
否、ほんとうは誰もが知っている。半兵衛に残された時がわずかである事。だから託したかったのだ。
死にいく者はどうしてか前向きになるものだ。生きる事は諦めざるを得ないというのに、これから生きる者の事ばかりを思うのだ。どんな者も生きる事を諦めて、現世に執着を遺す。これらは確かに矛盾しているが、共存し相反している。
感情の乏しい三成でも、胸をちり、と痛めるような言葉であった。その痛みと同時に、三成の瞳の光がわずかに揺らいだのを、半兵衛は見逃さなかった。
「君と僕は、同じ夢を見ているからさ」
見透かされた言葉は不快ではなかった。半兵衛の視線はいつでも三成の想いを見透かしていたのだから。
不思議なひとだ、そう思う。感情に乏しい彼の感情を理解する半兵衛。それは、二人がよく似ていて引き寄せられたのかも知れない。
「秀吉様はその夢を半兵衛様と見たいのです」
「……………君も大概、………この状況でそれを言うかい?」
半兵衛の呆れたような声は彼の生に触れたようで心地よい。三成の返事は即答だ。

「空気など読む気もありません」
「君らしい」と半兵衛は笑った。


2010 06 21 (月)


こんな短文がメールに残っていたので、アップしておきます。なんか中途な感じもしますけどね(笑)覚えてないからい〜や。


3で官兵衛がああいうキャラだったので、本来なら半兵衛とこんな会話をしたのはかんべかと思うんですけど。彼とはしないよな、絶対、とか。

タイトルは今(20110809)付けたんですが、読めないという意味を何方向かとかけています。笑え。

とりあえず豊臣ズはなんかすごい面々ばっかだな。3宴は発売日に買うと思われ。
ちなみに、サヤカとかんべが好きなんですが、あまり人気なさそうだなあ。
チカとサヤカのほんわかした話とか書きたいんですが、なかなか形にならなくってもう!北条と巫女ってのもアリだなぁ…や。ロリータじゃなくって。
実は3の文章書いてたりするんですが、日の目を見ないっていう…
結局放置プレイですね。イツモノコト(笑)


2010/06/21 09:22:10