「なっ……何をしている?!」
 先に声を荒げたのはアーロンの方。部屋の扉は開いたままで一足踏み入れたその格好のまま、半歩下がる。
 それはそうだろう。部屋の中でジェクトはズボンはともかく、パンツまで膝下まで下げていい気分に浸っているときたものだ。もちろんアーロンが予想だにしないことであったし、ブラスカとしてもそれをアーロンにズバリ言うのははばかられた。
 ずり下げたままソファーに腰掛け、気だるそうに、かつ、その快感の余韻に気を任せるべく居心地よさ気に凭れ、あらわなままの股間に手を添え脱力した姿のジェクト。
 しかし、アーロンの声、そして開いたままのドアに彼の驚愕の表情。ジェクトはハッと気付き、上半身を起こし、だが下半身を隠すでもなく気恥ずかしそうに情けなく笑みを浮かべアーロンに向く。それは咄嗟の行動だ。
「何、……ってなあ、そりゃ、見りゃ分かんだろ。センズリコイてたんじゃねえか。あ?おめぇさんも相当、デリカシーねぇなぁ?」
 見たいわけでもないが、そそり立ったジェクトのチンポが目に入る。そのまま口にするジェクトその人はまるで理性なき野獣のよう。アーロンは真逆の性質故、彼のその行動にカッとなりそのままツカツカとジェクトに歩み寄り睨み付けた。その間、約3秒程度のごく短い間。
「ふざけるな…!ブラスカ様の部屋を何だと、」
「しかたねえだろ。元は疲れマラ状態よぉ、今はサカっちまったけどな。男ならしかたねえだろ、ブラスカだって納得して部屋貸してくれたんだ」
 その言い訳のふざけていること、反省の色のないこと。全てがアーロンには気に食わなかった。このまま剥き出しの股間を踏みにじっても構わない、そう思うほどに。
 ジェクトとアーロン、目が合う。一瞬だけだったが、アーロンはジェクトの目が濡れていたのを見逃さなかった。
「女、買う金もねえ…オーナーに掛け合ったが、んなサービスない、とよ。溜まったんなら出すしかねぇーだろうが。――っと、アーロン、もしかして、童貞か?あん?」
 アーロンの思いもそのままに、ジェクトは勝手な質問を投げ掛けてくる。それだけならいいが、彼の話は当人にすれば実に屈辱さえ感じさせる代物だ。そういうことではない、とアーロンは僅かに声を荒げたがジェクトは気にする素振りも見せないながらも、丸出しの格好も情けないのかズボンを上げて平静を装う。
「そんなことを言ってる場合ではない!大体、よくそんな気になれるな…」
 召喚士の旅はそんなに甘いものではないはずである。
 確かに食欲・睡眠欲・性欲は人間には欠かせない欲望ではあるにしても、疲れから一番失せやすいのが性欲ではないのか。歳若いアーロンすら今回の旅の途中に感じる暇(いとま)さえなかった。それをジェクトが感じるとは、実に嘆かわしいこととしか言いようがない。
「あのなぁ…何だかオレも分かんねぇがチンポが立って寝れねえんだから仕方ねえだろうがよ」
 ジェクトと負けじとアーロンを見返すが、先程までその欲望のままそのチンポを擦っていた身分。体はそちらの方向へ向いているのか、火照った顔と何故か潤んだ目を向けている。まるで、強がっているかのように。
 今まで見たことない表情に戸惑いつつ、アーロンはジェクトから視線を逸らすべく下げれば、そこには彼がさりげなさを装いつつ隠した股間がもっこりと浮き上がっている様が目に入り、
「………もしか、して、…オナッたこともねえ、なんて、言うんじゃねぇだろうなあ。あん?」
 こんな言い合いをしている場合ではない、とアーロンはすぐに視線を戻す。その先にあったのは、妖しく光るジェクトの眼光。褐色に焼けた肌が月明かりに照らされて、異様な雰囲気を出している。
「カタブツ。ちゃんと答えろ」
 ジェクトの行動を読める者なんてきっと、この世界にはいやしないのではないか。そう、スピラの常識など通用しないのだから。
 ジェクトはアーロンの目をしかと見、彼の太腿に手を置く。顔の位置は驚くほど近い。そして、ジェクトの吐息は熱い。アーロンの腿をゆるゆると撫で回しながら、ジェクトはもう一方の手でアーロンを引っつかみ、強引にソファーに座らせる。自ずとアーロンとジェクトはソファーで向き合い互いを間近に見る形となり、ジェクトの笑みをたたえた口が見えた。
「オレのほうが人生の先輩ってやつだ。なら、教えてやっか!」
 言い終わる前に、ジェクトは体を屈めてアーロンの下肢に手をやっていた。あっと言う間もなくズボンの前は開けられていたし、イチモツは彼の手の中にあった。
(襲われている?!)気付くのにワンテンポどころか、このような事態に陥ったことが初めてで、スリーテンポくらい遅れてしまった。抗う間もなく竿を軽く擦られる。
 先程までジェクトは自慰していたのだ。手は汗ばんで熱っぽく、もしかしたら彼自身の我慢汁も混ざっているのかもしれない。否定の言葉をも失う程、実に心地よい瞬間である。
 そのアーロンの様子を眺め、ジェクトは笑う。
「――ヘッ、アーロン、おめえも共犯、だな」
 …してやられた、というわけか。アーロンは頭の中で深く溜息を吐き、更に反省した。ジェクトの狙いは文句を言われる前に仲間に引き込んでしまえ、そんなとこだろう。ナニを弄られてヨくならない男はそうはいないはずだ。アーロンとて健康な一男性なのだから。
 体がどうのというより、理性が先に立つこの男はジェクトの手を払い怒りを露わにした。
「っ、ふざけるな!」
 手を離したジェクトの視線はアーロンの股間にあり、何か言いたげにしている。あまり見られるものではない、恥ずかしさに顔が熱い。何よりジェクトが意識させるのが悪い。
「いい形だし、しっかりムケてんじゃねえか。こんだけ立派なモン持ってりゃあ女もほっとかねえわな」
 ズボンのチャックを閉めようとするアーロンを制し、
「まだ立ちきってなくてこのサイズ……しまったらイテェだろうが。しっかりヌイてやっからギャアギャア言うな。若ぇんだから、一旦立ったらなかなか収まんねぇーよ」
 ジェクトの言葉はいちいち最もで、確かにこういった意味では人生の先輩であった。アーロンもこのまま醜態を周りに晒すわけにもいかず、留まることを選ぶ。無言であることと、拒否をやめたのがその合図だ。
 ジェクトは口にしたとおり、アーロンの立ち始めたチンポを両手で包み上下に扱き出す。片手の指は器用にタマを揉み刺激する。若さはすぐに勢いづくもので、アーロンの呼吸が荒くなってきた頃にはすっかり立ち上がり、興奮に筋を浮かせていた。その間じゅうジェクトは何度も言葉を投げ掛ける。「どこが感じるんだ」とか「カリの形、エグくてメスがヨガりそうだな」とか「おー、筋張ってビクってきたぞ」とか…。恥ずかしくて仕方ない。
 ジェクトの攻め手が緩んだ時、アーロンはジェクトの方を凝視した。驚くことに、ジェクトは再び己もズボンとボクサーパンツを下げていた。勃起チンポが目に入る。ジロジロと見る気はなかったが、こんな気分だし他人のモノも見てしまう。
 ジェクトのチンポはアーロンのより小さい。だが、カリは見事に張っているので輪郭がハッキリしている。暗い部屋の月明かり中で我慢汁で濡れる勃起チンポは実にヤラシく映った。そのチンポに手を添え、アーロンのを擦りながら自分のも擦る。
「……あんた、ホモか」
「バッカ、違わい。男に興味なんざねえよ。一緒にセンズリしてるだけだろが」
 なんだかんだと言う割にジェクトの息は荒い。そうありながらも、しっかり二本のチンポをシコる姿は、奉仕的で不思議な色香がある。ぐり、と先端を親指の短い爪で引っかくようにする。そうすればさすがのアーロンも強い快楽にウッと呻き、同時にびくりとチンポは意思とは無関係にヒクつく。…忌ま忌ましい。
 それ以上に、ジェクトのチンポはヒクヒクしながら先から淫汁を垂らしている。我慢も限界が近いのだろう…そう思っていた矢先、ジェクトはいつの間にかアーロンの間近にいて耳の側で囁いた…
「   」
――フリをして、耳たぶを軽く食む。ちゅぱ、とくわえた音がイヤラシく響いた。アーロンの耳にかかる吐息は熱く、興奮を隠し切れていない。
 アーロンが堪らず肩をびくりと動かした様子を見、追い込むため上下運動の速度を速める。それだけでは足りないかもしれぬと見れば、ジェクトはすぐさまアーロンのイチモツを口に含んだ。
 途端、ちゅっと口が鳴り、その行為は助長された。と、同時にそれを意識したアーロンが否定せんとやめろ、と言いながらに腰を浮かす。そんなところは、口にするものなどではない(風呂に入ったと言えど)。
 そう言うのはジェクトの想定内。チンポの先を軽く吸い、敏感な部分を刺激し黙っているところに、タマに勢いよく吸い付き一気に興奮を与える。
 ジェクトの予想に反し、アーロンは嫌な顔をして体ごと逃げる。……どうやらタマはダメらしい。嫌な顔をしてチンポは勢いを失うのですぐに分かる。
 中には吸われると気分が悪くなると言う男もあり、ジェクトはすぐ口を離しタマは軽く舌でチロチロやるだけにし、竿に舌を這わせた。優しく舐めるだけなら気持ちいいはず。体の力が緩んだことでも明らかだ。
「同じ男(ヤロウ)でも違ぇもんだな?オレが感じるようにやりゃあヨガるかと思ったんだがよう」
「…っ、こっちまで巻き込むな!」
「――たく。イイ思いしてんだから、喜んでろっつうに」
 呆れた声を出すジェクトに、アーロンは逆に呆れ返っている。そんな彼を気にすることなく、先端をを揉み擦りながら裏筋を舌でナゾる。敏感な部分を刺激されれば、アーロンは逃げるように腰を浮かせた。すっかり油断していたため、いとも簡単にチンポは離れてしまう。だが、名残惜しそうにジェクトの唾液とアーロンの我慢汁が糸を引き、やがて糸がジェクトの側に垂れながら切れた。胸元の一部までをも濡らす彼は、実に淫靡な姿であった。
 まだ反り返ったままのチンポを追うように、ジェクトは胸を拭うこともなくアーロンに顔を寄せる。そのままの高さで寄ったので、位置はずれていた。ちょうどよいとポジティブに考えるジェクトはアーロンのタマの下の部分(かつ、ケツ穴に届かない箇所)――いわゆる蟻の門渡り――を舐めてみる。
 そんな部位を刺激されたことないアーロンはビックリして声を上擦らせながらも、その快感の余韻に力を抜くしかない。
 …とすれば、ソコはイイと解ったのだから少しの間、そちらを攻めるのも手というもの。結局はアーロンに勝ち目や逃げ場などない。余裕の表情でジェクトは自分のモノを扱きつつ、またアーロンのも擦る、といった序盤の行為を、さらに速度を増し続けるのであった。
 辺りに響くは、摩擦音から水音のようなものに変わっていく。先走って溢れ出た我慢汁がどちらの勃起チンポからも垂れていたことは、音だけで明白である。それに混じって荒い呼吸が二つ。まるで交わっているかのようだ。
「はぁっ、……なぁ、アーロン。好きな女、はいねえのかよ…?ソイツのこと、考えてろよ」
「…いない」
「つまんねぇなぁ。なら、過去に付き合ったとか、初恋の相手とか、んな女で我慢してろや」
 アーロンは、この状況も如何なものかと思うので、言われたとおりに思い浮かべてみた。遠い記憶にも、女性の影が少ないことに気付く。よくよく考えてみれば、恋愛など程遠いのであった。
 過去に付き合った女…?それは、いる。
 だが、相手をそこまで思っていたかと言えば、いつも男同士の友情を取っていた。
 今回の旅もそうである。寺院のお上どもが勝手に指定してきた見合いなどくそ喰らえとばかりに、ブラスカという召喚士に着いてきたのだ。ブラスカは周りからの評判はあまりよい男ではない。召喚士ともなれば、周りから慕われてごく当たり前であるのだが、娶った女がアルベド族だったがためにアルベド側からも、寺院側からも複雑な立場にある。つまりは、『召喚士の落ちこぼれ』なのである。
 しかし、アーロンは彼に魅入られた。ブラスカという人は、本当によくデキた人間なのである。どんなに人種差別を受けても、弱音を吐かず、周りを怨まない。仕打ちを受けた時も実にさわやかなものである。
「私がシンを倒せば、アルベド族を見る彼らの目も、変わるだろう」
 個人が悪い。人が悪いのではない。ましてや、人が信じる歴史が悪いわけでもない。ブラスカは皆を許していた。そして、目の前の得体の知れない、ザナルカンドから来た、などと言う男を拾った。危険も苦労も省みず。
 アーロンは、女のことを思い浮かべようとし、結局は頭に仲間の二人の顔しか浮かばなかったことに呆れてしまう。…本当に女っ気がないものだ。
「…忘れた。お陰で、目の、前の、ヒゲヅラ男、しか目に入らん」
 お前らしいな、とジェクトは笑った。笑いながら手を離し体を間近に寄せ密着する。向かい合って抱き合うような格好だ。と、その時、股間に温かいものが触れ、敏感なソコを反射し見遣る。
「セックス………てよぉ、」
 ジェクトとアーロンのチンポは、我慢汁をダラダラ垂らしながらピッタリと密着させられていて、それをさらにジェクトが握る手によってゴリゴリとくっつけられている。向きが逆なだけに逆側に反る勃起チンポがビクビクと脈打っている様子が、アーロンの目に映る。脈うつ度に、僅かにクチュクチュと、ごく低くヤラシい音が辺りに響く。
「――性器と性器が擦れ合うコト、なんだとよ。だから、マンコにチンポコがハマったとき、なんだと。…なら、野郎同士なら、コイツかぁ?―…なァんて」
 片手で二本のチンポを握り、力強く擦り始める。だが、二本ともなればうまく擦れず相手にも、自分にももどかしさしか与えない動きだ。それに勝手に焦れたジェクトは腰を動かしながら、自分も相手も気持ち良くなるように擦り付ける。相手の先端と自分の先端が上手く触れ合う瞬間はほんの一瞬だが、一瞬を感じるように腰をゆるゆる、だが、それを求めるあまりにガクガクと激しく徐々に腰の動き早める。
 気持ちいい。
 たまにひどく人肌恋しい時がある。悶々として、体にタオルケットや毛布を巻き付けたりして寂しさを紛らわそうとするのだが、ただ虚しさだけが募り、逆に誰でもいい、自分ではない誰かに触れてほしいという気持ちが膨れ上がる。とても惨めな気持ちだ。
 今の気持ちはそれに近い。何かが物足りず、達することもできずにいる。
「あぁ…、足りねぇ。悪ィ、けど先っぽ、手ェ添えるだけでイイから、よ」
 アーロンに手を貸してくれ、と吐息混じりの声でねだる。浅ましい男だと思う。そんな思いにも構わず、ジェクトは手を強引に取り、体液でぬちゃりとした感触を残す。勝手な男だ。だが、何故か抗えずにいる自分がある。
 アーロンの手に擦り付けるように腰を動かし、ジェクトの指先はアーロンの勃起の先端に矛先を向けていた。竿同士は擦れ合い、快感と濡れた音を辺りに散らす。
 堪らなかった。行為に慣れぬアーロンは低く呻く。激しく蠢くスジチンポの様子でもはや達すると判れば、ジェクトはティッシュを引っ張り出し、アーロンの精液を受け止める。もちろん一度で出切るわけもないのでゴシゴシと強く擦って、出し切るまで搾るように扱いてやる。
 若さはここまですごいのか。アーロンが勢いよく二度目に吐き出した精液は、ティッシュを飛び越してジェクトの鼻面にかかる。そして、最後にドロリと下へ滴る。溜め込んでいたようで、かなりの大量である。
 深い呼吸とともに体から力を抜き、その時にジェクトのチン先に添えていたアーロンの手が、うまい具合に尿道を刔るように軽くカリッと引っ掻いた。
 と、同時に思いがけない刺激のため、今まで我慢していたのはなんとやら…。ジェクトは情けなく「あっ…あ、ヤバ、…っ」と言いながら果ててしまった。ビクビクと何度も体ごと痙攣させつつ達する姿は、実に艶っぽい。アーロンはその姿をボンヤリとその目に映していた。
 お陰で、アーロンの手やズボンにもザーメンが引っ付くわで、射精の余韻に浸る間もなく、汚れた服の処理におおわらわ。しかも、思い出してみればここはブラスカの寝るはずの部屋。精液の生臭さが充満しているから、寒いのに窓は開けなきゃならないわで……。
「臭ぇ臭ぇ!あんなに出しやがって。寒ィっちゅーに……あ〜あ」
「お前こそ」
「勝手にイクのが悪い」
「…元は、誰のせいだ」
 悪態づきながら、部屋を掃除し終えたのは、アーロンが部屋を出てから一時間以上も後のことであった。


 気怠い。
 精液を出した後に訪れるソレを振り切りながら、不可思議な長い時間をただ、ブラスカ一人にさせた揚句に戻った二人。きっと漂っているであろう生臭くも懐かしいニオイに、ブラスカも苦笑いを浮かべつつ迎えてくれた。…だが、部屋が心配なのであろう、複雑な顔をしながらジェクトの額を小突く。
「こら、ジェクト」
 小突かれたジェクトはのけ反った格好をしながら、ヘッと鼻で笑うのみ。
 アーロンは気も落ち着かず、黙ってベランダに向かっていってしまった。二人でまた部屋に入る前に、気を落ち着かせておこうなどとキマジメな考えの上だ。
「若いコをからかってはいかんよ」
 ブラスカの言葉は、アーロンには聞こえていない。


 明日からまた、長く先の見えない『シン』を倒す旅が始まるのだ。そんな息抜きをしたある宿での出来事。



―――――――

2010.1.11



なんだかんだで今年初のアホゥな作品だったりします。


ちなみに、去年の12/17からはしばらく13ばっかやってました(笑)
好きなキャラは、ジェクトさておいて、ファングですが!



さて。
この小説はケイタイで最初から最後まで打ち続けたイタイヤツです。
でも、まぁうっただけにやめるわけにもいかず、こんなつまらんホモ小説を書ききってみたわけです。べつにもえないけど。


でもジェクト大好きまくりです。


配布元:Abandon
最後の一人になった君へ より