『好きに ならんもんなら 、要らんよ・・・』

 そんな処だけ、とても気が合う。


花狩
Title of 濁声




 珍しい日であった。
 信長は遠征と言ってどこかへ出かけて行った。だが頼りになる供などなしに。
 初夏なのにもかかわらず、寒い夜であった。松永は風呂から戻る折、夜風に当たり今日の冷えを感じていた。
 無言。だが、皮膚はそれを鳥肌という形で表へ表わそうとしている。
 感情。感覚。すべて面倒で、邪魔くさいものだ。松永はいつもそう思っている。
 かんじる。それは、利用するにはちょうどよいこと。だが、己の身にかかることとなれば話は別だ。ヒトの身体とは実に不便なものだとおもうばかり。
 今も、そう。冷えた身体は、また風呂へなびくように熱を求める。今日の昼間はそう寒かったわけではない。嫌なことだ、昼間が温かいだけに、夜は冷えて感じるのだ。やはり、感覚とは邪魔なもの。
 温かさを求めて、松永が足を伸ばした先は、今上がったばかりの風呂ではなかった。

「ご機嫌如何かな?」
 声を掛けて、これまでに何度も情を交わした女の元へ赴く。身体を温めるには、格好の相手である。
 その声だけでは、誰が来たか分からなかったらしい。彼女は松永の姿を見るなり、その華奢な身を固め、己の部屋だというに後ずさった。
 来てほしくない。それは、松永も分かっていたこと。だから、逆にそそられる。逆に彼女が眩しく感じられる。不思議なものだ、こんなときの感覚は悪いものじゃない。
 後ずさりながら襖を閉めようする彼女の動きを先読みし、松永はいち早く彼女の前に足を踏み出す。答えなど否定以外にないのだ、聞く必要もない。ずかずかと部屋へ上がり込む。
 追いつかれてたまるものかと、彼女は松永から遠ざかるために後退し続けた。だが、部屋には限りがある。逃げ切れるはずもないのだ。松永は余裕であった。
 松永の重さが、部屋の畳を軋ませる。重い音が静かな部屋に木霊している。他の音で聞こえるのは過呼吸気味になっている彼女の息遣いのみ。

 数日前には信長と共に彼女と会った。
 そして彼女のことを抱いた。彼女は行為中、夫・信長を目に焼きつけながら、だが、松永に身を委ねて腰を振っていたではないか。あられもなく。信長の言うとおりに声をあげ、ほしいままに快楽を貪っていたのだ。
 喘ぎ、乱れた彼女は今以上に美しい。そして感度もよく、こちらに対しても実に具合のいい身体であった。
 現在の彼女は別人のように身を強張らせ、絶対に抱かれまいとしている。
 だが、それが無理なことは松永には解っている。彼女は松永の身体の味を知っている。そしてそれは忘れ難いであろう。
 身体の快楽は、精神すらも天から地へと落とすこともありえるのだ。それをこれから、嫌でも自覚してもらわねばなるまい。
 彼女の身体が、松永を欲して熱を放っていることは、彼女の身体から発せられる雌の匂いからも容易に解ること。
 逃げる彼女を許さず、松永は乱暴に髪を掴み、荒々しく己の口で口を塞ぐ。叫び声の上げようのなくなった塞がれた口は、互いに触れ合ってその体温を伝える。
 髪を掴む荒々しさとは逆に、口づけはあまりに優しくささやかなものであったことに、彼女は呆気にとられた。そのうちに唇は舐められ、吸われ、さらに口づけられ、そして口のなかまでも味わわれようとしていた。
 気づく間もなく、思考は唇へと溶け込んでいき、もはや逃げることなどかなわぬ抵抗となった。彼女を探る舌の動きに翻弄されながら、肩を怒らせていた力などとうに抜けて、立っているだけの状態になってしまっている。
 催淫効果でもあるのではないか、とおもわれるほど腰もくだけそうになる口づけの威力に、松永の唾液は媚薬なのではないかなどとおもいながらも送り込まれる唾液を呑み込み切れずに口の端から溢し、そして手を放された瞬間、その場にへたりと倒れ込んだ。
 もう逃げてやる、などという思考は無意味。だから残っていなかったし、残してもいなかった。最後の抵抗に、口だけはきつく噤んだまま。
 今度は彼女の髪を梳くように、優しく撫でながら軽い口づけと共に、帯を外し着物を脱がせていく。
 快感を期待し熱を発する彼女の身体は、そこからは逃げようともせずに松永から受ける優しくも、苦しい快感に身を任せるのみだ。
 松永の唇が、舌が、指先が、指の腹が、ときに彼女の身体のどこかしこに触れ、それが余計に熱をもたらす。そしてそれは、快楽の最も強い陰部には決して触れずにその手前で止まる。
 気の狂いそうな快感の時間。激しくなくも、じっくりと彼女を、否、彼女の理性を溶かす快楽の波に、精一杯抗って彼女は、股間の茂みを己の体液でしとどに濡らしながらそれでも、口の息を止めてただひたすらに鼻息のみで声を押さえ続け耐えた。
 太腿に伝う彼女の液をぺろりと舌で掬い取り、松永は指で軽く女の芽を摘み、軽く何度か擦る。透明な粘液に塗れたそこは、熟れていて実に滑りも良かった。
 だが女は強情だ。「ん、ん、ん、……!っう」と何度も声を上げそうになっては、己の意思で口を噤み堪えた。
 松永はよがり声を聞きたいわけではない。どうしても声が聞きたいのならば、彼女の口に指を突っ込んで無理にでも開けさせてやればよいのだ。彼はそれを望んではいない。無理にさせたことでは、彼女は屈したことにならないのである。
 淫らに蠢き誘う彼女の割れ目に指を入れ、深さを探るように動かしては、徐々に指の本数を増やしていく。広がった割れ目はさらに太い物を欲しがるようにひくひくと動いて松永に訴えかける。
「物欲しそうにしておられますな?濃姫」
 一度彼女から指を引き抜き、粘液にまみれた指を眼前で見せつける。ねばねばと厭らしくも淫らにそれは広がり、そして途切れる。「…結構よ」
 彼女は強がりを言った。松永が欲しいと、彼女の身体は誘惑している。眼を逸らしたのは、彼女がそれを認めるのが嫌だからに相違ない。
 それを分からせるために、もう一度彼女の弱い女の芽を人差指と親指で優しく摘み、くりくりと刺激する。
 彼女は急に与えられた強い快楽から逃れようと、腰を動かしていたが、その行為すら逆に己の快楽を強めるものであったことに気づくには遅かったようである。
 だが、彼女の鉄壁の意思は声を洩らすことなく、彼女を快楽の絶頂へとすぐに連れていく。絶頂は、彼女の足腰の震えと、激しい息遣いには隠しようもなく現れている。
 絶頂を迎える寸前で、松永は永い仕置きを加えんと、ぴたりと手の動きを止め、解放してしまった。
「欲しい物があるならば、ねだるがよい」
 胡坐をかき彼は、彼女が己を欲しがるように仕向けた。

 だが。
 彼女は彼の前では首を振るのみだった。

 彼女の身体の熱が引く前に、松永は再び彼女を攻め立てた。そのたびに彼女は熱にうかされ、快楽に身を投じ、そして欲しがらずに悪びれた。
 攻めては離れ、攻めては離れた。
 やがて、松永は彼女をそのまま置き去りにして着衣、部屋を後にしたのだった。

 松永は分かっていた。
 彼女は自分の顔を見た途端に、感じ始めていたことを。そして、期待していたことを。
 だが、それは精神を超えることはできず、信長を超えることもできなかった。今目の前に存在していない信長さえも!
 満たされない熱は別に、もう身体は温まっていたし、これ以上みじめなおもいをすることはない。と己に言い聞かせていた。
 あのまま彼女を抱くことなど容易であった。だが、彼女の方から「欲しい」と言われなければ、何の意味もないのだ。ただの独り善がり。己の支配欲すら満たせなかったろう。
 だが―――、とおもう。女など価値は安いものだ。どうせ支配するならば、もっと価値のある者の方がよい。そうおもうのだ。
 松永は無言のまま、己の頭に上った熱を冷やそうと、冷えた縁側に突っ立ってしばらくそこにいたのだった。



 彼女という花を狩れなかった男の負け惜しみか、熱が冷める頃には、日がぼんやりと昇りつつあるのであった。


*****

絢香の夢を味方に、恋焦がれて見た夢のシングルを聞きながらうちこみました松永×濃姫のエチ編(笑)
でもエロくないし、精神世界的な処があるので……

むしろ松永VS濃姫という感じで書きました。
結局どちらが勝ったかは、読んでれば分かると思う…。


これだけ読むと、ただヤッてるだけの文章なんだけど(チュドーーーン!!!)
前の話もあるってことで、書けました。まぁ一部分ですよって思えば、ただヤッてるだけのくだらねえ文も書けるわけよ。
松永さんのキャラもあると思うがね。彼ってば意味なくやりたいからやる。みたいなキャラですし。快楽主義者なので(オフィシャル)。

M嬢濃姫なら相手は誰でもいいですが、光秀とかはありそうだね?痛い痛いな話で終わりそうだが(彼の性癖上、気持ちいいだけなんてこと、ありえない)
いいね!松永の顔見るだけで濡れる、インラン濃姫!わほほ(←笑)

2009/04/25 09:33:12