『好きに ならんもんなら 、要らんよ・・・』
そんな処だけ、とても気が合う。
花束の奥に
男の名は、織田信長。まだ若く周りには「大うつけ者」と呼ばれ嗤われていた。突拍子もないことをやらかしたり、こんなことでうまくいくはずもないことを、平気でやって、成功したり、ときには、失敗したりしていたからだ。
だが、彼は未来に名を遺すほどに、そういった失敗も成功も経て、大成功するのだが。
信長の前に現れたのは、一人の大男。信長は元々大柄、というわけではない。周りの爺よりは大きいが、とりたててでかいわけではない。
そんな信長の前に訪れた男はとりたてて大きな男だった。名を、松永秀久、という。
秀久は、落ち着きのある男。信長よりも年下だというのに、彼よりも数段落ち着きがあり、かつ、冷静に物事を判断するため、彼よりも年上に見られた。これが当人にとって喜ばしいか否かは別として。
彼は信長の突起な振る舞いを耳にし、傍に居りたいと現れた逸材であった。その際に差し出した茶器は、信長のたからものとなった。
「卿の野心には惹かれるものがある」
その言葉は、若かりし信長の脳内をも揺さぶった。
どうして。そんなことが言えるというのか。
彼の考えは分からない。
野心。
そう、信長は天下を統一せんと、己のものにせんと、爺どもすらも黙らせようと、躍起であった事実は否定できない。
「野心とは、欲望。」
「それも、愛。」
「…否、それに近い、」
「されど、憎しみにも近い。」
「それを見たいのです。」
途中途中に信長が「何故」「理由は」「で」と挟まなければすべてを聞き出すこともできなかった、途切れ途切れの言葉たち。松永は口数のすくない男であった。
だが、その稀に見る読めぬ人柄に、彼は惹かれてしまったのであった。
「嫁はおらぬのか」と、ときに信長は秀久に尋ねた。
「棄てました。」と彼は答えた。何の臆面もなく答える彼に続けて、
「では、好きな女を使え」と告げた数日後、「信長卿の奥方が最上」と答えた。その答えに信長は、尻尾を振っているわけではあるまいな?と思いつつ、「無料で貸す」と告げた。
「有難き幸せ。では満足かどうか、卿が見極めるようお願い申しあげまする」と。
信長の目の前で、その嫁である濃を犯す秀久は圧巻であった。
信長は濃に「我が赦したのだ。足を開け」と言うし、松永はそれを聞く前に手を出すという始末。濃は厭だと逃げたが、男はそれを聞き入れなかった。
情もなき欲は、ただ苦痛でしかないはずなのに、松永の手練手管は的を射ていて、濃の思考すら溶かした。
その空間は、濃の喘ぐ声と、信長の笑い声だけが支配した。まるで、松永秀久はそこにいないかのように。濃の眼には信長しか映っていない。
「……あれも、満足しておる。」
愛液に塗れた秀久の手を取り、信長はそれを舐め味わった。そしてくたりと横たわっている濃のことは一瞥したのみ。秀久に感想も聞かずに。
それが奥方に対する愛情か、それとも安心感か。松永には、分からなかった。
それ以降、何度も、何度も。松永は信長の嫁である濃を抱いた。
信長には特に告げなかったが、濃は道三の娘。松永は道三のことを知っていた。何故だろうか、彼はそれを黙ったままであった。
…本当は、道三の目の前で彼女を犯したかったのに。
それは不定期に、何度も行われた。濃を、彼は抱いた。
濃の中は、秀久には実に心地よく、深く、入り込めばすぐに達してしまうほどの名器でったのだが、それは、信長にはよくなかったのであろうか?さすがの秀久でもそれは聞けなかった。
だがその行為に抗うかのように、濃からねだることはなく、媚びることも腰を使うこともない。言い得て鮪女。それを見てつまらぬと思ったか、信長がひと声掛ける。
「…おい、何をしておる。腰を使え。声を我慢するな」
男に媚びよと夫がそれを命じる。そこで初めて嫁は腰を使い声をあげ、そして、夫の名を呼ぶのだ。
そんな行為を見ても、信長は何とも感じていないようであった。特に興奮するわけでもなく、参加するわけでもない。名を呼ばれても返事のひとつもしない。
だがときたま、ふとその眼に焼けるような炎を見えた。それはふ、と松永と目が合ったときのこと。
不思議な情事だ。そう、松永でさえも思っていたときのことであった。
信長の顔を歪めさせることなど、行為のなかでは不可能と思いながらも、それでも信長によく見えるように、濡れて光る女性器を見せつけるよう、濃を後ろから犯し足を開かせ己の膝に乗せた体勢であった。
濃の満足は、松永の太腿すら濡らす具合で、誰の目にも明らかであった。濃は何度も信長を呼ぶ。「上総介様…」と。何度も何度も。
松永が腰を揺らすたびに、部屋のなかに雌の匂いと、愛液のぐちゃぐちゃという厭らしい音が耳に届く。この行為のとき、松永は言葉を発さない。
松永も信長も、その雌の匂いにつられた馬鹿どもが部屋を覗き見していることは知っていた。だが、敢えてそれを咎めることも何もしなかった。決して手の届かぬものに恋い焦がれる様を見るのは愉しい。だからこそよく見えるように足を広げさせ、突き立てているのだ。
高嶺の花を穢すのは実に愉快。だが、この満たされぬ気は何なのだろうか、と内心、松永は思っていた。
部屋には女が喘ぐ声と、夫を呼ぶ声と。雄の欲情に足る雌の香りと、濡れた音。茶々を入れる信長の声、たまに愉しそうな彼の笑い声。
ここには何故か、松永は存在しているのに、存在していなかった。
この何かがずれて、歪んでいる可笑しな夫婦の愛情の深まりを確かめるために動いているようだ。と、松永は内心思う。馬鹿馬鹿しく、実にくだらないことだ。
これだけ犯しても、濃は信長のものでしかない。不愉快。この三文字が正しいように思う。
そんなことを思う松永を、じぃっと、信長は見つめていたらしい。口元には笑みさえたたえて。
ふ、と気づくと目が合う。それは、ときが凍る瞬間に、よく似ている。
信長の眼は、何を言いたいか判らなかった。ここまで心を掴めない眼を、松永は初めて見た。
だが、言えることは、それは燃えるような強い意思をたたえた眼差しであったということ。
…何物をも、見透かす瞳。
ふ、と信長は、鼻で嗤った。見透かすように。
女の喘ぎ以外は静寂のなか、二人は語り合っていた。よく男は拳で語り合う、などと馬鹿くさい言葉を聞くが、それは拳でもなく、瞳。
花のような、否、花を束ねたような濃を挟んでの、二人にしか分かり得ない世界。
花束の奥に潜む影か。それとも、彩る影か。
別の者に抱かれながら信長を求めて、虚しく空を掴む彼女の手が、果てるのと一緒に力なくその場に堕ちた。
「…欲は、果てぬから面白い」
信長の口から出た言葉で、松永は己が如何ともし難い想いに駆られていたことを、見破られていたことに気づく。
だが。どこまで信長は見透かしていたのか。
次は―――
と、言葉にはしなかったが、松永は精根果てた女から身体を離して彼に、何かを伝えようとしていた。だが、伝えなかった。
今でなくともよい。次のことは、次に、伝えればよい。
まだ、己が何を言おうとしたのか、すら分からないのだから。
果てなき欲のために、花をも折る、それが、世の習わし。
信長と松永、二人は個々に背を向けながらも、分かりあっているかのように口元は笑んでいた。
→ (続)花狩
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続くのでハンパです。
最初のあたりはポッと出で、酔っ払ってて、しかも普通の説明文だった(笑)
信長くんも松永さんも好きなキャラなんですよ。まともじゃないところが。絶対腐ってますから。
この話は松永×濃姫なのか…。そういえば見たことがない組み合わせじゃなかろうか。ま、濃姫がM嬢ならワシ個人としてはどうでもいいんですが。
もうね、名前がM嬢濃姫ってなるくらいにM嬢ですね、彼女は。調教されればいいと思います。
ただ、描写だけで書こうと思ってるので、アッシの作品はエロにはならない。元々そんなの書ける器じゃないし、エロシーン書こうと思ったわけじゃないから。この話の場合は。
でもM嬢には言葉責めが必要だと思うんですよね。あと、その気のないやつには、顔責めをしてやるべきだと思うんです。
一応、信長と松永の話ではあるので、濃姫はサービスショットというか、狂い具合を出すにはちょうどよかった。
続きが思いついたらベストな形で書きたいものです。
2009.04.23
追記:20100509
このタイトルもお題サイトから貰ってきたのですが、
サイトがつぶれてました。うん。アクセスなし3ヶ月とかでモバスペ消えちゃうんだよね。めいわく。
で、どこのサイトか忘れてしまったが、お借りしていました。題名考えるの、苦手なんだもんで。
これを書いてからもう一年も経っている…どうりで続きができないわけだ(笑)
松永さんとあなごさん(ブー××)信長くんは好きなので、もっと書きたい気持ちはあります。
2009/04/23 09:30:49